2017年12月22日金曜日

♪ASIPIアニュアルミーティング ♪

 報告が少し遅れてしまいましたが、11月末に、ASIPIという団体のアニュアルミーティングに参加してきました。

ASIPIは、Inter-American Association of Intellectual Property(環アメリカ知的財産協会)という名前の団体で、毎年、11月末に、中南米の地域でアニュアルミーティングを開催します。今年のアニュアルミーティングは、パナマで開催されました。
 

このアニュアルミーティングには、主に中南米の知財実務家が600800人くらい参加します。このアニュアルミーティングへの日本からの参加者は、今年は、私を含めて3人でした。すべて創英の弁理士です。私は、3年前から毎年このアニュアルミーティングに参加しており、他の日本弁理士にも参加を勧めていますが、残念ながら、今のところ創英以外からの参加はありません。

では、何故、わざわざ地球の反対側の中南米まで行って国際会議に参加するのか?最近、日本のお客様の商品の市場はグローバル化しており、世界中で知的財産を保護する必要があります。中南米でもしかりです。しかしながら、日本と中南米との間の知財保護制度の相違、ワーキングスタイルの相違、日本人とラテンの人たちの性格の相違などから、中南米での知財保護はなかなかスムーズには進みません。そこで出てくるのが、創英の「現場主義」です。現場に行って、物事を見、聞き、話し、いろいろと進めてこよう、という考え方です。実際に中南米に行き、中南米の知財実務家と会って話をすると、それ以降、「アミーゴ」として特別扱いしてくれ、仕事もスムーズにいくようになります。一方で、「振込手数料が高いから、現金で支払う。」と言われ、創英がした仕事の手数料を現場で受け取ってくることもあります^^;ということで、特に中南米の知財実務家とまとめて会えるASIPIアニュアルミーティングは、我々にとって、非常に価値のあるミーティングなのです。

アニュアルミーティングのプログラムには、ネットワーキングのためのイベントも含まれています。その1つが、スポーツ・デイです。アニュアルミーティングの参加者が、みんなでテニス、ゴルフ、サッカーなどを楽しみながら、ネットワーキングをするというものです。私は、昨年は、サッカーに参加しました。中南米の人たちは、子供のころからサッカーに親しんでいるせいか、みんな超うまい。うまいどころではなく、超うまいんです。私も小中高大とサッカーをずっとやってきて少しは自信があったのですが、中南米の人たちとの格の違いを見せつけられました。なので、今年は、ゴルフに参加しました。そしたら、なんと、準優勝!!!まあ、なんだかんだと、楽しいスポーツ・デイでした。写真は、まじめにカップまでの距離を測っている律儀な日本人を後ろで馬鹿にしているコスタリカのボソとアルゼンチンのパブロです。
 
 

その他のイベントとしては、ディナー・パーティです。我々のテーブルには、日本、アメリカ、メキシコ、チリ、エクアドル、ボリビア、コスタリカの人が集まり、国際色豊かなテーブルとなり、話も盛り上がりました!こんな時、日本人は有利ですね。寿司とか天ぷらとか、和食の話をすれば、みんな乗ってきますので。
 

ディナーの後は、いつも、自然とダンスパーティになります。中南米の人はダンスが好きですからね。写真は、舞台に上がる前に、隅っこの方で、ペルーのジェニファーから、ダンスのステップを習っているところです^^;
 

ASIPIアニュアルミーティングの期間は、ほとんど自由時間がなく、忙しく活動していました。でも、帰国日の午前中だけ自由時間がありました。帰国便の出発が夕方だったからです。そのことをパナマの友人に話すと、「せっかくパナマに来たのだからパナマ運河を見てから帰るべきだ。俺の運転手を貸すから、行ってこい。」と言われ、パナマ運河に行ってきました。運転手のラウルは、スペイン語しか話しませんが、とても親切なやつでした。往き帰りの車の中では、私の片言のスペイン語に付き合ってくれ、とても楽しいツアーになりました。ありがとう、ラウル! (商標部門長T.K.



 

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2017年12月15日金曜日

【新人奮闘日記】第七弾は4条1項8号についてです!~INTELLASSET事件(平成21年(行ケ)第10074号)~


こんにちは
新人のD.Mです。

年末ということもあって、忘年会シーズンですが、
我らが部門長はカラオケでその美声を失いつつあります。
 
さて、今年最後の新人奮闘日記になりますが、今回のテーマは趣向を変えまして、4条1項8号についての裁判例をご紹介します。
まずは条文から見ていきましょう。

条文では、
 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
となっています。

4条1項11号では「類似」、4条1項15号では「混同」が要件となりますが、4条1項8号では他人の氏名などを商標中に「含む」ことが要件となっています。
また、4条1項8号の趣旨は11号の「出所混同の防止」とは異なり、「人格的利益の保護」となっています(国際自由学園事件 最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁)

では、今回の事件であるINTELLASSET事件を紹介していきます。

今回の事件を簡単に言ってしまうと、原告の本件商標「INTELLASSET」に、被告の著名な略称である「INTEL(登第1373591号等)が含まれているか、が争点となりました。

つまり、「インテル入ってる?」が争点となりました!
 
そして、ここで問題となるのは、「含む」の解釈です。
さらに言えば、ただ単純に、物理的に、含まれていれば4条1項8号に該当するのかが問題となります。
では、裁判所の判断を見ていきたいと思います。
 
まず規範として、 
問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず、当該他人を想起、連想できないのであれば、他人の人格的利益が毀損されるおそれはないから 
単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要する
と述べました。
  
そして、結論としては、原告の本件商標「INTELLASSET」は4条1項8号に該当しないと判断がされました。
 
具体的には、
 ・「INTELLASSET」文字部分は外観上一体
 ・「INTELLASSET」の語は日本においてなじみのない語であり、一見して造語と
  とらえられることから、
   「インテル・アセット」の称呼が生じたり(インテルとアセットで分けて称呼しない)
   「インテルの資産、財産」の観念が生じることもない(ASSETは資産、財産という意味)
といった理由から、「INTELLASSET」の「INTEL」部分が被告の略称等として客観的に把握され、当該被告を想起・連想させるものではないと判断をしました。
 
【所見】
「客観的にみてその部分が他人の略称等であると把握されず、当該他人を想起、連想させるものでないのであれば、そもそも当該他人の人格的利益が毀損されるおそれはない」といった主張を原告はしていましたが、この考えを裁判所は全面的に認めたと考えられます。
個人的にもこの考え方に賛成で、物理的に他人の略称等を含んでいるだけで8号に該当するのでは、商標の選択の幅が大きく制限されてしまうと思います。
 
今回はこれで以上になります。
気が付けば早くも第七回。毎日くじけそうですが、何とかやっています!
来年もさらに頑張っていきます! 新人D.M
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2017年12月6日水曜日

新人奮闘日記6  そばの伊右衛門(いえもん)!?

こんにちは。商標部門の新人弁理士T.Wです。

早いもので今年も残り1ヶ月を切りましたが、判例勉強会も6回目を迎えました。

いつもはここでK部門長の動静を話題にしていましたが、先月、判例勉強会のメンバー皆さんらとの飲み会の席で、「オレのこと、ちょくちょく書いてるよなー。俺は根にもつタイプだよ」と言われてしまいました・・・。

というわけで、余計なことを書いてクビにならないように、今回は早速本題に入りたいと思います。
担当した裁判例は「伊右衛門事件」(知財高裁 平成21年(行ケ)第10378号)です。

この裁判では、以下に掲げるそば屋さんの商標「そば処 伊右エ門」(本件商標)が、ペットボトルの緑茶飲料でおなじみの商標「伊右衛門」(引用商標)と「混同」を生ずるかが主に争われました。

なお、裁判に至る経緯としては、「そば処 伊右エ門」(本件商標)が商標登録されたにもかかわらず、㈱福寿園の無効を求める審判請求により、特許庁で無効とされました(無効審決)。そこで、この判断に不服のある原告(㈲はせ川製麺所)が無効審決を取り消すべく、知財高裁に訴えたわけです。

 
本件商標                   引用商標
登録5150330号                  登録第4766195
   




30類「そばの麺」他     30類「茶」、32類「清涼飲料」他
㈲はせ川製麺所;原告    ㈱福寿園;被告  ※専用使用権者;サントリー㈱



これまで見てきた最高裁の判例や裁判例では、商標が「類似」(商標法4111号)かの争いでしたが、前回(新人奮闘日記第5弾)に続き、今回も「混同」(商標法4115号)を生ずるかの争いとなっています。 

「混同」というのは、本件を例に説明すると、おなじみの(周知著名な)「伊右衛門」を見ると、「福寿園とサントリー」の緑茶飲料と分かる現実がある中で、「そば処 伊右エ門」を目にしたときに、実際は「はせ川製麺所」の商品にもかかわらず、釣られて「福寿園、サントリー」の商品と間違えてしまうことをいいます。

このように混同を生ずるおそれがある場合には、商標登録が認められていません(いったん認められても後から無効にすることができます)。 

さらに、「福寿園、サントリー」は、そば屋なんかやらないから、どこか別の会社の商品だと思われたとしても、「福寿園、サントリー」がその別の会社との間で業務上提携関係等があるだろう(組織的経済的に何らかの関係を有する)と間違えられる場合にも、「混同」(広い意味での混同)を生ずるおそれがあるとされています。このような場合にも、商標登録が認められていません。

 本件では、正面から「混同」しないと反論しても勝てないと考え、矛先を変えようとしたのか、原告「はせ川製麺所」は、被告「福寿園(またはライセンシーであるサントリー)」が使用する商標は、次の①から⑥の構成を有し、引用商標とは(比較する対象が)そもそも異なるといった主張を展開しました。
 
 
 
①緑色の竹筒型の背景
②赤地に白色の「京都」の文字
③白抜き漢字「福寿園」
④白抜き平仮名文字「いえもん」
⑤白抜きの○茶
⑥白抜き漢字「伊右衛門」
 
 
 
 
しかし、裁判所は、商標を商品に使用する際、商標自体のデザインに修正を加えたり、容器,包装,パッケージの形状・デザインに工夫を施すことはよく行われているため、常に、上記の⑥(縦書き)白抜き漢字「伊右衛門」を①から⑤と一体で商標を構成すると解する必要はないと判断し、引用商標が使用商標とは異なるといった主張は認められませんでした。 
 
また、原告は、「緑茶飲料」と「そばの麺」では、加工の手間・売り場・保管方法に違いがあること、飲料と食品では商品の性格が違うこと、商品の包装の形態・賞味期限の長短・販売経路の相違があることなどから、商品同士に密接な関連性がなく、「混同」を生じないという主張もしました。 
 
しかし、この主張に対しても、裁判所は、相違はいうほどではなく、「茶そば」がそばの一つのジャンルとなっている上,「緑茶飲料」が料理や弁当類と同一の機会・場所で一緒に飲食されることが一般的であることなどから、「そばの麺」と「茶」には密接な関係があると判断しました。 
 
そして、福寿園が運営するカフェで,顧客に対して「茶そば」を提供している事実も取り上げ、「そばの麺」に本件商標「そば処 伊右エ門」を使用するときは,商品の出所が福寿園、サントリーらと経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるとの「混同」を生ずるおそれがあると判断しました。その結果、「はせ川製麺所」の登録商標「そば処 伊右エ門」は無効とされました。 
 
商品の密接な関連性があるかの判断は、商標の周知著名性と比例するような関係(商標が有名であればあるほど、より幅広い商品との密接な関連性が認められる)にあるように感じていますが、弁理士の立場からすると、もう少し予測可能性のある判断手法が見いだせるといいのになと思う今日この頃でした。
 

 

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