2022年4月11日月曜日

静岡県富士市の「かつれつえん」??【勝烈庵事件 不競法・周知性】

 商標弁理士のT.T.です。 
 さて4月といえば、新卒入社シーズンということで、今年も多くの新卒が創英に入所いたしました。
 ところで私の新卒時代は、某メーカーに就職したのですが、その工場は、静岡県富士市にありました。入社日から2カ月間が工場研修ということで、私は富士市に滞在したことがあったのです。
 だから私は、4月というと、富士市で過ごした日々を懐かしみ、そんな富士市を代表する有名な知財判決「勝烈庵事件」(横浜地裁 昭和56()2100号)をも思い起こしてしまいます。 

 「勝烈庵事件」とは、横浜市のとんかつ料理店「勝烈庵」(原告)が、富士市のとんかつ料理店「かつれつあん」(被告)に対して、「かつれつあん」の表示が、いわゆる周知表示混同惹起行為(旧不競法112号)に該当するとして、差止及び損害賠償等を請求した事件です。
 横浜地裁は、原告の営業表示「勝烈庵」が横浜市周辺で周知であることを認定した上で、富士市付近でも周知であるか検討した結果、①被告の最寄駅「富士駅」と横浜・東京は電車で23時間を要し、通勤や気楽に日帰りで出かけることを想定しうる距離関係にはないことから、くちコミによる方法で「勝烈庵」が周知性を獲得したとは推認できず、マスメディアによって「勝烈庵」が全国的に紹介されたといっても、その頻度はさほどのものではなく、また、富士市の住人にとって、遠隔地にある「勝烈庵」の紹介は、特に関心を引く事項ではないことから、マスメディアによる方法で「勝烈庵」が周知性を獲得したとは推認できない、といった理由により原告の訴えを退けました(横浜地裁 昭和56()2100)。 




(写真:原告「勝烈庵」の馬車道総本店と、勝烈定食(1760円))

 上の写真が示す通り、原告「勝烈庵」は、未だ横浜や鎌倉でとんかつ料理店を営んでいるようですが、被告・富士市「かつれつあん」は、どうなってしまったのか、元・富士市民(?)としては気になってしまうのです。

 手始めに、判決文に記載された情報を元に、被告店舗が入居していたという「鈴久ビル」を検索してみましたが、ヒットせず、また、被告店舗の住所を検索してみると、グーグルマップは富士駅北側の製紙工場を指し示してしまいます。

 「勝烈庵事件」は、昭和58年(1983年)に判決が出た事件だけあって、時間が相当経過していることから、富士市「かつれつあん」は、もはや存在していないのでしょうか?

 ただし、「富士市 かつれつあん」と検索すると、気になるお店がヒットします。それが「かつれつ」です。

 

 どうやら「かつれつえん」は、富士市の老舗とんかつ料理店らしく、名前も「かつれつあん」と、どことなく似ています。しかし、その最寄駅は、富士駅のひとつ北隣「柚木駅(ゆのきえき)」です。判決文では、富士市「かつれつあん」の最寄駅が、富士駅とのことですが、「かつれつえん」は富士駅から大きく離れてしまっています。 

 やはり、「かつれつえん」は、たまたまそういう名前だったというだけであって、富士市「かつれつあん」とは、一切関係ない可能性が高そうに思えます。

しかし、その真相を確かめようにも、私が住む東京都から富士市は、判決文に記載の通り、電車で3時間程度かかってしまいます。とんかつを食べるためだけに往復6時間程度をかけるのは、非常に馬鹿馬鹿しいことですし、何よりも、行ってみた結果、富士市「かつれつあん」と一切関係ないことが判明した場合には、とても虚しいです。

そのため、「かつれつえん」に行くのを渋ること、数年が経過してしまいました・・・

 

・・・ところが4月某日、別件で、富士市を経由する”用事”があったため、丁度良いからお昼ごはんに「かつれつえん」へ行ってみることにしました。 

改めて、「かつれつえん」の場所を説明すると、JR東海道線から「富士駅」でJR身延線に乗り換え、その隣の「柚木駅」が最寄駅となります。柚木駅から県道369号線を西へ進むこと約10右手に「かつれつえん」の看板が見えてきたら、到着です。



 「かつれつえん」は、古民家を改造した風な内装となっており、とても落ち着きます。
 そして、私が注文したのは「とんかつ定食」(1200円)で、ジューシーなとんかつに加え、マシマシの野菜とポテサラも付いてくるので、とても満足いたしました。また、赤味噌を使用した汁物も珍しく、グッドポイントです。

 

さて、私の目的は、食レポをすることではなく、「かつれつえん」と富士市「かつれつあん」の関係性について真相を突き止めることなのです。お会計時、馬鹿なことだと思いながらも、店主に尋ねてみました。 

「すみません、このお店は、昔、富士市にあった『かつれつあん』と何か関係があるのでしょうか?」 

「それ、ウチのことです。」  

!?!?!?意外な即答に、思わず興奮が高まります。
 どうやら35年前のこと、富士駅近くにあった店舗から、現在の場所へ引っ越し、それと同時に店名を「かつれつあん」から「かつれつえん」へ変更したのが真相のようです。


ということで、「かつれつえん」は正真正銘、富士市「かつれつあん」だったのでした。
 「かつれつえん」では、ジューシーなとんかつを食べることができ、判決の後日談も知ることができ、もう私はお腹いっぱいです。

皆さまも、静岡県にお立ち寄りの際は、ハンバーグレストラン「さわやか」ではなく、「かつれつえん」に行くことをおススメいたします。 
 無理を承知に言いますが、特に弁理士受験生には、「かつれつえん」へ行くことをおススメいたします。

知財裁判で勝っ(カッ)ただけに。

T.T.


にほんブログ村
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿