2022年5月17日火曜日

「いかしゅうまい」発祥の地は現代版・竜宮城だった【いかしゅうまい事件 3①3】

 

 商標弁理士のT.T.です。 

 前回は、九州・熊本の「たこの立体商標事件」(東京高裁 平成12(行ケ)234号)を取り上げましたが、九州には「タコ」だけでなく、「イカ」に関する商標事件もあるのです。それが、佐賀県呼子町の「いかしゅうまい事件」(東京高裁 平成11(行ケ)101号)です。 

 「いかしゅうまい事件」とは、「いかしゅうまい」を考案した有限会社萬坊(現:株式会社萬坊)が、縦書きの行書体からなる「いかしゅうまい」の文字(指定商品:いか入りしゅうまい)を商標登録したところ(登録4084767)、異議申立(異議H10-90664により、当該商標登録は、商品「いか入りしゅうまい」の品質・原材料を表示するに止まるとのことから取消されたため(313号違反)、それを不服として、商標権者により提起された取消決定取消訴訟の事件です。
 東京高等裁判所は、「しゅうまい」の平仮名表記は普通に用いられる方法であり、「いかしゅまい」の語に格別の独創性・特異性はなく行書体は普通に用いられる方法の域を脱していないことから、商標法313号違反の判断には誤りがなく、また、「いかしゅうまい」の文字が商標権者との関係で特別顕著性も認められないとして(32項非該当)、商標権者の訴えを棄却しました(東京高裁 平成11(行ケ)101)。

(登録4084767号)
 

 「いかしゅうまい事件」の舞台となった佐賀県の呼子町(唐津市)は、佐賀県北西部のリアス式海岸からなる漁業町で、「呼子のイカ」は全国ブランドとなるほど、イカの産地として有名です。
 また、「呼子の朝市」は日本三大朝市の一つとして数えられ、豊臣秀吉が文禄・慶長の役(朝鮮出兵)の際に築き上げた「名護屋城(址)」も近くにあります。

(写真:呼子町)


(写真:呼子のイカ干し回転マシーン)


(写真:呼子朝市通り)


(写真:名護屋城址)

 そんな「いかしゅうまい」発祥の地とされる場所は、「呼子の朝市」が行われる中心街から西へ徒歩で約20の所にあります。しかし、ここはリアス式海岸の地。徒歩で行くにはアップダウンが激しく、まさに天然の要塞。そりゃ、豊臣秀吉もここに城を築くはずですよ。

 そのため、「いかしゅうまい」発祥の地へはレンタカーで行くことがおススメですが、歩いていると、至る所で「いかしゅうまい」の表示を観察することができ、嗚呼、「いかしゅうまい」の文字には識別性がないのだなと、実感させられるのでした。

そして、一山超えた先にあるのが、「いかしゅうまい」発祥の地「海中魚処 萬坊です。何と、海の上に浮いているのです。一応、という扱いらしく、「名村造船所」で造られたことを示すプレートや、「最大搭載人員:250人」の表示もありました。




 桟橋を渡り、店内に入ると、フロントから地下へ案内されました。階段を下りると、巨大な水槽がお出迎えしてくれます。そうです、名前の通り「海中魚処 萬坊」は、(日本初の)海中レストランなのです。 
 ヒラメが舞う姿は確認できなかったものの、タイをはじめとした様々な魚介類が泳ぐ姿を見ながら食事ができる「海中魚処 萬坊」は、まさに現代の竜宮城と言っても過言ではないのでしょうか?
 



 さて、私が「海中魚処 萬坊」で注文したのは、ここの最上級料理「いかざんまいコース」(4400円)です。せっかく商標事件に関連する店に来たのだから、やはり贅沢したいでしょう。今回の目的「いかしゅうまい」以外にも、様々な「呼子のイカ」を堪能することとしました。 
 早速、前菜として「いかの小鉢」、「いか入り魚豆腐」、そして「いかしゅうまい」が押し寄せてきました。

 何と言っても、お目当ての「いかしゅうまい」を食してみると、イカそうめんのようなシュウマイ皮が舌を撫で回し噛むとイカのようにプニプニとしたシュウマイ皮の食感が歯を伝わり、さらに噛み締めるとイカの肉汁が漂い、ただ美味しいだけではなく、三段階の美味しさを楽しむことができました。

 ところで、「いかしゅうまい」は、レストランで提供されているだけではなく、お持ち帰り用商品もあります。ただし、イカの如く足が速く、要冷蔵商品なので、旅行のお土産として持ち歩くのは不向きでしょう。それでしたら、自宅近くで買う方が良いのかもしれません。東京では、大丸東京店(東京駅)に売っています。
 お持ち帰り用「いかしゅうまい」は、蒸して食べるのも良いですが、油で揚げてみると、シュウマイ皮がカリカリパスタのようになって、ヤミツキになります。

 

 ちなみに「いかしゅうまいせんべい」というのもあり、こちらは常温保存が容易で、日持ちもするので、旅のお供やお土産として、持ち歩くことが可能でしょう。

 話を「いかざんまいコース」に戻しますと、次はいよいよメインディッシュの「いかの炊き込みご飯(+お吸い物、香の物)」、「煮物椀(いかのツミレ)」、そして「いか活き造り」が登場しました。

 「いか活き造り」は、血管みたいなものがピクピクしており、また、脚もたまに動き、非常に生々しいですが、かえって新鮮な証拠であり、おいしく食すことができました。イカの胴体部分を全て食べ終わると、イカは一旦回収され、残り部分が天ぷらとして戻ってきたのでした。最後にデザートも付きます(これはイカでできていません)。


 ということで、現代の竜宮城こと「海中魚処 萬坊」では、普段の昼食が400円以内のパンorおにぎり私からすれば、少々お金を使い過ぎてしまいましたが、それを忘れさせてしまうほど、「いかしゅうまい」の他「呼子のイカ」たちを楽しむことができました。 

ところで、「海中魚処 萬坊」には、地下の海中席だけでなく、地上1階の海上席も存在します。普段は、海中席か海上席か選ぶことができるらしいのですが、大型連休のような繁忙期には、選ぶことができないようです。
 海上席で、佐賀100景にも選ばれる「呼子大橋」を眺めながらの食事も、風情あるかもしれませんが、やはり、せっかく来たなら海中席を確保したいところ。個人的には、海中席を確保するためには、ひとつコツがあるように思えます。

(写真:レストランから見る呼子大橋)

 それは、カップルのような極めて少人数で訪れることです。なぜならば、海上席は、大テーブルのお座敷席のみからなり、少人数専用というよりは、むしろ、家族連れといった大人数専用のようでした。
 一方で、海中席には、大人数専用席もありますが、一部、小テーブルのみ配置されたコーナーがあり、私のような一人旅人も含めた少人数客は、優先的にそこへ振り分けられる感じがしました。そのため、海中席を確保するならば、極めて少人数で訪れることが良いのかもしれません。 

だから、私の席の周りは全て、カップル、カップル、そしてカップルでした。それは果たして竜宮城と言えるのでしょうか? 

 (T.T.


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