こんにちは。
新人のMです。新年第1回目の投稿です!さて、ぶらぶら日記ファンの皆様はよくご存じかと思いますが、
“新人奮闘日記シリーズ”では、新人目線で、商標に関する裁判例のご紹介をしていました。
裁判例をまとめ、発表するといった新人研修があり、その内容をブログにアップしていました(この研修は無事に終えることができました!)。
この他に、商標部門では自己研鑽の場として、「審決研究会」というものも開催しております。
毎月の最終水曜日に、担当者が直近の審決を調べ発表し、他の参加者と議論を交わすといった内容です。
そこで、久々ではありますが、新人奮闘日記シリーズ改として、審決研究会で取り上げられたものをお伝えしていければと思います。
今回紹介させていただく審決は、不服2017‐9423です。
具体的には、審査段階では、以下の本願商標と引用商標1及び引用商標2が類似すると判断されたものの、審判段階で非類似と判断された事例です。
・本願商標「食彩厨房 いちげん」(商願2016‐60411号)
指定役務(抵触役務) 第43類「飲食物の提供」(類似群コード:42B01)
・引用商標1「一玄」(登録第5446822号)
・引用商標2「一幻」(登録第5868140号)
まず、一般的な感覚として、「本願商標と引用商標1及び引用商標2が類似するのか?」といった疑問が浮かぶと思います。
そこで最初に、“商標の要部認定”について、ご説明させていただきます。
“商標の要部認定”とは、簡単に言ってしまうと“単独でも商標になり得る部分を認定すること”です。
例えば、「創英国際特許法律事務所」(指定役務は、第45類 工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務)、といった商標が出願された場合、全体の「創英国際特許法律事務所」以外に、「創英」部分も単独で商標になり得えます。
これは、指定役務との関係で、「国際特許法律事務所」部分の識別力が弱いといったことが理由の1つとして考えられます。(感覚的にも、弊所を「創英」と略して呼ぶと思います。)
本件では、本願商標を構成する「いちげん」部分が要部と認定されたと考えます。
これも指定役務である「飲食物の提供」との関係で、「食彩厨房」部分の識別力が弱いと考えられたためです。
また、商標の類否は、主に商標の外観・称呼(読み方)・観念(意味合い)が総合的に考慮され判断されます。そして、特に日本では「称呼」が重視される傾向にあります。
本願商標の要部である「いちげん」部分と引用商標1「一玄」及び引用商標2「一幻」から生ずる称呼「イチゲン」が同一であることから、本願商標と引用商標1及び引用商標2は、類似すると判断がなされたと思われます。
しかし、審判段階では、本願商標の「いちげん」部分は要部とはならず、本願商標は全体としてのみ商標として機能するとして、本願商標と引用商標1及び引用商標2は、非類似と判断がなされました。主な理由は、以下の通りです。
・本願商標の外観について
前半の「食彩厨房」の文字と後半の「いちげん」の文字とは、同書、同大で外観上まとまりよく一体に構成されている。
・本願商標の観念について
観念上も、特に、軽重の差を見いだすことはできないもの。
・本願商標の称呼について
本願商標から生ずると認められる「ショクサイチュウボウイチゲン」の称呼も格別冗長というべきものでなく、無理なく一連に称呼できるもの。さて、みなさんならこのケースをどうお考えになるでしょうか。
正直な感想として、「外観のまとまりが良いか悪いか」や「称呼が長いか否か」については、どちらに判断されてもおかしくはないと思います。
一般的なお客さんの目線に立てば、定食屋さんの看板に、「食彩厨房 いちげん」と書いてあれば、「いちげん」とお店の名前を略しても不思議ではないと思います。
また、「食彩厨房」の語は、飲食店の名前の一部に、ある程度使用されていることからもすると、本願商標の「いちげん」部分を要部と認定しても良いのではないかと私は考えます。
そのうえで、本願商標の「いちげん」部分と引用商標1「一玄」及び引用商標2「一幻」は、非類似と判断する流れでもよかったのではと個人的には思います(称呼同一でも、外観・観念が異なれば非類似となるケースがあるので)。
今回はここまでです!
結論は同じでも、異なる理由が考えられる。このようなところが商標実務の面白さなのでは?と新人ながら生意気に思う今日この頃です。
それでは、商標審決例紹介シリーズ 第2回にご期待ください!
新人D.M
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