商標弁理士のT.T.です。
カレンダーも6月となり、季節は、ほとんど夏です。アイスクリームが美味しくなってくる季節ですね。
ところで、私が初見で感動したアイスクリームといえば、丸永製菓の「白くま(棒アイス)」でしょう。ラクトアイスとフローズンフルーツの組合せは、まさに、この世の物とは思えない絶品、と感じた小学生の夏でした。
そんな小学生だった自分は、まさか、この「白くま(棒アイス)」が、商標の「しろくま事件」(大阪地裁 平成8年(ワ)12855号)に巻き込まれているとは、知るはずもありませんでした。
その上で、かき氷に冷涼感や食感が近い「氷菓」は、かき氷の代用物であることから、「しろくま」は「氷菓」の普通名称であると判断しました。一方で、食感がクリームに近い「ラクトアイス」は、かき氷の代用物でないとして、「しろくま」は「ラクトアイス」の普通名称に該当しないと判断しました(なお、慣用商標にも該当しないとした)。
したがって、被告が、ラクトアイスに「白くま」の標章を付して使用していたことは、商標権侵害に当たるとして、差止・廃棄となりましたが、氷菓に「白くま」の標章を付して使用することは、普通名称を普通に用いられる方法で表示した商標につき(商26条1項2号)、商標権の効力が及ばないとしました(大阪地裁 平成8年(ワ)12855号 参照:大判例)。
しかしながら、冒頭の通り、丸永製菓のラクトアイス「白くま」は未だに販売されています。おそらく、原告と被告で何かしらの取引があったのだと推察されます。
さて、判決によれば、被告(丸永製菓)は、「白くま」の標章の使用が、「普通名称を普通に用いられる方法で表示する商標の使用」(商26条1項2号)、又は、「慣用商標の使用」(同4号)であり、商標権侵害に該当しないと主張するため、「しろくま」の元祖について、次のように説明していました。
ここで登場する「鹿児島市内のある店舗」とは、「天文館むじゃき」のことです。「しろくま」の元祖には、諸説あるようですが、丸永製菓は、「天文館むじゃき」説を採用しているようです。
「天文館むじゃき」(本店)は、鹿児島中央駅と鹿児島駅の中間に位置する、鹿児島最大の繁華街「天文館」に位置します。「天文館むじゃき」(本店)では、同ビル内で、1階の「白熊菓琲」の他、2階と4階でもグループ系列の飲食店を営業しており、どの店舗でも、元祖「白熊」を食べることができるようです。
流石、元祖を名乗るだけあって、大行列ができていましたが、2階や4階の飲食店は、並ばずに入店できたようです。確かに、白熊を食べることだけがお目当てならば、2階か4階でも良かったでしょうが、ご存じの通り、私は元祖至上主義。だから、元祖と思われる1階「白熊菓琲」に、あえて並び続けました。
並ぶこと約15分、「天文館むじゃき(白熊菓琲)」に入店できたのが昼頃だったため、元祖「白熊」の前座と昼食を兼ね、同じく「白熊」の名を冠する「しろくまちゃんのフレンチトースト」(740円)と「しろくまアートカプチーノ」(510円)を注文しました。
特に「しろくまアートカプチーノ」は、呼子のいか活造りを食す時も無感情だった私ですら、可愛すぎて飲むのに3分躊躇してしまいました。
そして、いよいよ登場したのが、元祖「白熊」(740円)です。むじゃきオリジナルのミルクソースのかかったかき氷と、フルーツの組合せが美味しいのは、もちろんのこと、容器の底までフルーツが敷き詰められており、最後まで飽きさせません。
元祖「白熊」には、フルーツの他、謎の丸い菓子が飾り付けられています。これは、「白くまちゃんのおへそ」と言いまして、サツマイモで出来たスイートポテトです。ここだけ謎の鹿児島っぽさ全開です。
せっかく「白くまちゃんのおへそ」を鹿児島っぽさ全開にするならば、サツマイモと同じく、鹿児島県が生産量1位の「ゴマ」を素材にした菓子にすべきだったのでは、と思います。へそゴマだけに。
ところで、「天文館むじゃき」のかき氷が、「白熊」と呼ばれるようになったのは、上面から見たレーズンとサクランボの配置が、まるで白熊の顔のように見えたから、とのことです。しかしながら、見た目だけでなく、その食感も「白熊」たる所以ではないかと、私は思っています。
即ち、元祖「白くま」のかき氷部分の食感が、とてもフワフワしており、まるで「白熊の毛皮」のようなのです。
と判決で裁判官は述べていますが、あの毛皮のようなフワフワ食感は、市販の「氷菓」では、再現が不可能でしょう。判決に異論はないですが、つまり、元祖「白熊」は、かき氷や氷菓ではなく、「白熊」という食べ物である。
なお、本物の白熊の毛皮は、「お湯につける前の春雨」の触り心地らしいですが。
(T.T.)
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