2022年1月4日火曜日

商標「氷山事件」の「しょうざん」とは京都の観光名所の名称らしい?!

商標弁理士のT.T.です。

 突然ですが、創英の福利厚生といえば、「東急ハーヴェストクラブ」に宿泊できることです。「東急ハーヴェストクラブ」とは、東急不動産グループが全国展開する会員制リゾートホテルのことで、要は会社の保養所みたいなものです(参照:東急ハーヴェストクラブウェブサイト)。 

その中でも今回は、「東急ハーヴェストクラブ京都鷹峯」に宿泊することにしましたその場所は、都の西北の地「鷹峯」の「しょうざんリゾート京都」というリゾート施設の敷地内にあります。


(画像 上:しょうざんリゾート京都の看板 下:東急ハーヴェストクラブ京都鷹峯)


 そうです。
 あの「氷山事件」に登場する「しょうざん」です。

(左:出願商標「氷山」 右:引用商標「しょうざん」)

 「氷山事件」とは、出願商標「氷山」(指定商品:硝子繊維糸)と引用商標「しょうざん」(指定商品:糸)の類否を争った事件であり、最高裁は、両者の称呼が比較的近似する場合であっても、外観と観念が著しく相違し、硝子繊維糸の特殊な取引実情では称呼のみによって商標を識別等することはほとんど行われないとしたため、両者は非類似であると判断しました(最高裁 昭和39年(行ツ)110)。
 下記の「氷山事件」判旨は、我が国の商標の類否判断を基礎づけるものとして、商標に関わる者なら、誰もが知っていることでしょう。

「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」(最高裁 昭和39年(行ツ)110


 「氷山事件」の「氷山」は、上記画像が示す通り、「日東紡績株式会社」の商標であることは知られていますが、「しょうざん」の方は、創業者・松山政雄氏の苗字「松山」を音読みしたものであり、元々、着物メーカーとして創業したものですが、現在では、京都洛北でリゾートホテル・結婚式場・各種飲食店・ゴルフ場等を運営する総合リゾート企業にもなっています。 


(画像:「しょうざんリゾート京都」鳥観図 パンフレットより引用)

 「しょうざん」のリゾート事業の起源は、第2次大戦後すぐまで遡り、着物の製造販売等で財を成した創業者・松山政雄氏が、京都鷹峯に、東京ドーム約2.5個分の土地を購入し、日本庭園を造って一般公開したことに始まるようです(参照:しょうざんリゾート京都ウェブサイト「しょうざん誕生の歴史」)。 

 その日本庭園が、通称「しょうざん庭園」。「しょうざん庭園」は、有料の「北庭」と無料の「南庭」が存在し、北山から移植された樹齢300年~500年の「北山杉」や、各地から移築された古い木造建築物を楽しむことができます。
 なお、「しょうざん(松山)」だからといって、「松」が植えられ、「山」が築かれている訳ではない模様。





 「しょうざん庭園」の他にも、「しょうざんリゾート京都」の敷地内を散策していると、至る所に「しょうざん」の表示を発見することができます。

 「しょうざん」印の立て看板、自動車、アジサイ園・・・商標弁理士からすれば、垂涎ものでしょう。ただし、「氷山事件」の引用商標「しょうざん」と同じフォントのものは、現在使われていないようで、とても心残りでした。


 旅行といえば、お土産です。「しょうざんリゾート京都」には、お土産コーナー「しょうざん 染織工芸館」があります。「しょうざん」製の物のみを取扱っている訳ではなく、
京都の食品・工芸品が幅広く販売されています。

 その中でも私は、「しょうざん」で作られたというシルクウール生地(布切れ)を購入しました。理由は、「氷山事件」の引用商標「しょうざん」(指定商品:糸)に一番近いものだったからです。


 店員さんに、この布の用途を伺ったところ、特に決まった用途はないとのこと。今のところ、私には、他の弁理士さんに「これは『氷山事件』の『しょうざん』で購入した布なんだぜっ!」自慢することぐらいしか用途はなさそうです。

 なお、シルクウール生地を購入すると、「しようざん」「松山」「SHOZAN」の標章が付された包装表紙に入れてもらえます。


 ところで、私が東急ハーヴェストクラブ京都鷹峯に宿泊した2021年末は、生憎の大雪。しょうざんリゾート京都から、雪で白く染まる鷹ヶ峯を臨むことができました。つまり・・・

 私は、しょうざんで、氷山を見た!

T.T.




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