2022年2月24日木曜日

流行語の商標登録可能性【3①6・そだねー・忖度まんじゅう】

 商標弁理士のT.T.です。

さて、20222月の冬季北京五輪は、日本代表が過去最多のメダル数とのことで注目されましたが、やはり、商標法的に注目だったのは、女子カーリングのロコ・ソラーレでしょう?? 

そうです。ロコ・ソラーレといえば、前回2018年の平昌五輪に「そだねー」「もぐもぐタイム」といったパワーワードを生み出し、特に「そだねー」が2018 ユーキャン新語・流行語大賞」では年間大賞となりました。(ちなみに、北京五輪では「そだねー」を自粛したらしい。)
 そして、それに影響されてか、多数の「そだねー」が、商標登録出願されたのが、商標法的注目ポイントです(商願2018-024077、商願2018-64527等)。

(左:商願2018-024077 右:商願2018-64527

 いずれの出願商標「そだねー」も、J-PlatPatを見た限り、識別性がないとして全て拒絶査定となっているようです(出願取下を除く)。おそらく、「そだねー」といった新語・流行語大賞となるような語は、「商品若しくは役務の宣伝広告を普通に用いられる方法で表示したもの」であるとして、商標法3条1項6号違反に該当するものと考えます。

では、新語・流行語大賞に選出されるような語は、識別性がないとして絶対商標登録できないのかといえば、全てがそうではありません。 
 例えば、忖度」(2017年 年間大賞)は商標登録されています(登録6223798号)。


(登録6223798号 30類「菓子,中華まんじゅう」等 出願日:2017/06/16 

ところで「忖度」というと、某夫妻をイメージされる人が多いと思いますが、商標権者は、「株式会社ヘソプロダクションとなっています。誰ですか?
 実は、「株式会社ヘソプロダクション」とは、その代表取締役(稲本ミノルさん)が、「忖度」の新語・流行語大賞受賞者なのです(参照リンク)。受賞者となった一番の理由は、某夫妻が当時勾留されており、授賞式に参加できなかったことにあるようですが、この株式会社ヘソプロダクションも、「忖度」において、大きな貢献を果たしたことも影響しています。

それが、株式会社ヘソプロダクションが販売する忖度まんじゅうです。

忖度まんじゅう」とは、20176月に発売された商品で、もちろんオリジナル「忖度」(20173月初出)に便乗して作られたものです。しかしながら、発売半年で累計10万箱も売れたヒット商品となり、話題になったことから、株式会社ヘソプロダクションの代表取締役が、受賞者として選出されたようです。 

ところが、登録6223798号「忖度」は、出願人が賞の関係者だからといって、すんなり商標登録された訳ではありませんでした。
 審査では、「忖度」の語が「流行語として認識されるほか、商品の宣伝において使用される語句の一つとして認識される」ことから、識別性がないとして拒絶査定となり(商標法3条1項6号)、拒絶査定不服審判まで進んでしまったのです。 

その審判請求書では、①「忖度」は宣伝広告に一般的に使用される語句ではない②「忖度」を付したまんじゅうは、各種メディアに取り上げられ、新語・流行語大賞を受賞し、10万箱を突破するヒット商品であるから、出願人の取り扱いに係る商品であると需要者等に認識されているといった点を主張したようですが、最終的には審決にて「流行語として広く一般に認識されている語であるとはいえるものの、該文字が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないといえるほどに、不特定多数の者によって商品等の販売、広告等に使用されているとの事実を発見することはできなかった」として、識別性があると判断され、商標登録が認められたのでした(拒絶2019-007900)。

 

そんな「忖度まんじゅう」は、創英から歩いて約15、有楽町駅前の東京交通会館1階にあるアンテナショップ「大阪百貨店」で販売されており、仕事帰りに手軽に入手可能です。
 ただし私は、商標部門長らに忖度はせず、私とその家族だけで美味しく頂きました。

箱には、登録6223798号と同じ書体の「忖度」がプリントされた丸型のまんじゅうが入っております。味的にもネタ的にもおいしいです。


 ところが、その餡は「こしあん」です。これでは、相手が「つぶあん派」だった場合、忖度できない可能性に注意してください。
 まあ、私は「こしあん」だろうが「つぶあん」だろうが、どっちでも良いと思っていますが・・・
・・・私は「きのこの山派」です。

T.T.



にほんブログ村
にほんブログ村

2022年2月16日水曜日

弁理士試験でオススメな便利アイテム(時計編)

 商標弁理士のT.T.です。
 突然ですが、弁理士試験に必須なアイテムといえば、受験票、筆記用具、そして時計ですね。

弁理士受験界で道具の話と言えば、もっぱら論文用ペンの話ばかりで、万年筆orボールペンどっちが良いか、ブランドは何が良いか、太さは何ミリが良いか、みたいな話が挙がります。
 なので今回は打って変わって、「時計」にスポットを当てて、弁理士試験の本番で使えるものを紹介しましょう! 

まず弁理士試験受験案内によると、弁理士試験で使用できる時計は、モノが特に限定されてはいません。一応、カンニング防止のために通信機能付時計は禁止されているようですが、試験監督に許可を取れば、置き時計すら使うこともできます。

そこで、商標弁理士的にイチオシの時計といえば、パロディ商標の事件で有名なフランク三浦」ではないしょうか?かの「フランク三浦事件」でも逆境を乗り越え、裁判で勝訴したのですから、その縁起にあやかるのも良いと思います。

※「フランク三浦事件」とは
 高級腕時計メーカーの「フランクミュラー」グループが、そのパロディ商品の商標登録5517482号「フランク三浦」(14類「時計」等)に対して、登録4978644号「フランク ミュラー」(14類「宝飾品」等)等を引例とした無効審判を請求した事件。審決(無効2015-890035)では、商標法4条1項10号・11号・15号・19号に該当するとして無効であるとしましたが、その審決取消訴訟で知財高裁は、称呼は類似するが外観・観念は相違することから両商標が非類似であり、4000円~6000円の低価格時計「フランク三浦」と100万円を超える高級腕時計「フランクミュラー」では指向性が全く異なるといった理由により、10号・11号・15号・19号には該当しないとして、審決を取消しました知財高裁 平成27年(行ケ)第10219)。


(左:本件商標 右:引用商標)


・・・というのは嘘です。

本当に、弁理士試験でオススメな時計とは、クロノグラフ(ストップウォッチ機能)付きアナログ時計だと思っています!


(写真:弁理士T.T.が実際に弁理士試験で使用していたクロノグラフ付き時計)

 そもそも受験界全般では、時計は「アナログ派」か「デジタル派」かの論争がありますが、これは、残り時間を視覚的に瞬時に把握できる「アナログ」の方が有利というのが、鉄則でしょう。
 その上で、クロノグラフ機能は、秒単位で正確な時間を把握できることからオススメなのです。 

 実際、弁理士試験会場では、正確な秒数を把握することが難しいです。何故なら、会場備え付けの掛け時計はあっても、秒針がない可能性があるからです。ちなみに、近年会場にされやすい青学や立教には秒針がありませんでした。 

そのため、試験時間は、試験監督の時計を基準に進行するものと考えた方がいいでしょう。試験会場では、試験監督が標準時子午線なのです。
 一応、試験監督からは、試験前の秒針を正確なものに調整しているとアナウンスはしていましたが、その試験監督の時計と自分の時計は、必ずしも秒針が一致しているとは限りません。

 加えて試験監督は、今何時何分何秒地球が何周回った時なのか、自身の時計の正確な時間を教えてくれません。
 私の思い出バナシとしては、特許法論文試験の開始5分前、大胆不敵にも「私の時計の秒針を試験監督殿のモノに合わせたいので、今何秒か教えてください?」みたいな質問をする受験生が居て、もちろん却下されたことがありました。その背中越しからも伝わる彼の物悲しさは、今でも忘れられません。 

 そんな弁理士試験で活躍するのが、クロノグラフ付きアナログ時計です!
 使い方は簡単。試験開始の合図と同時に、ポチっとスイッチを押して、クロノグラフを起動するだけです。これで、自分のクロノグラフと試験監督の時計は、秒針のシンクロ率ほぼ100%のはずなので、試験時間が残り何秒なのか、瞬時に正確に把握することができるということです。

 

そのクロノグラフの本領が発揮されるのは、論文試験の時でしょう。論文試験となると、答案構成からの答案作成というステップを踏むため、タイムマネジメントが重要となり、正確な時間の把握は必須です。
 特に、毎度時間が足りない特許法では、そのタイムマネジメントが勝敗を握ります。令和3年度の弁理士試験においては、論文特許法の問題数が、前年比で爆増し、多くの受験生を苦しめたことからも、なおさら、タイムマネジメントの重要性が増してきているように感じます。
 たとえ、たった数十秒であっても、正確な秒数を知っているか知らないかで、その安心感は格段に違ってくるはずでしょう。 

なお、短答試験は、基本的に時間がかなり余るはずなので、秒単位で正確な時間を知る必要はあまりないと思います。

 

ということで、私は、弁理士試験で、クロノグラフ付きアナログ時計を使用したことにより、合格へ一歩前進できたと思っています。クロノグラフ付き時計を購入することが、皆様の弁理士試験合格への一助となれれば幸いです。

試験に合格して弁理士登録すると、「フランクミゥラ」をクレジットカード一括で購入できる薔薇色の人生が待っていますぞ!

(T.T.)


にほんブログ村
にほんブログ村

2022年2月9日水曜日

弁理士が貰って嬉しいギリチョコ特集(立体商標 3①3)

 商標弁理士のT.Tです。

さて、もうすぐバレンタインの季節ですね。バレンタインといえば、青春の甘酸っぱい悩みもあるでしょうが、義理チョコも悩みの種ではないでしょうか?近年では「義理チョコ」疲れなんて言葉も聞きますし、毎年ブラックサンダーばかり貰うのも、何だかマンネリ化を感じます。
 そこで今年のバレンタインデーは趣向をこらし、弁理士が貰って喜びそうな義理チョコをプレゼントしてみてはどうでしょうか? 

例えば、「ギリアンチョコレート事件」のチョコレートバー(国際登録0803104号)とかどうでしょうか?・・・義理だけに。


(国際登録0803104号)

 「ギリアンチョコレート事件」とは、ベルギーの高級チョコメーカー「ギリアン」が出願した、国際登録0803104号の上記「チョコレートの形状」からなる立体商標登録出願(第30類「チョコレート・プラリーヌ」)について、特許庁の審判(不服2004-65058)では、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示したものに過ぎないとして、識別性がない(商標法3条1項3号)と判断しましたが、その審決取消訴訟で知財高裁は、チョコレート面上の車えび・扇形の貝殻・竜の落とし子・ムラサキガイの図柄選択・組合せ及び配列並びにマーブル色の色彩が結合している点について、識別性があると判断し、商標登録が認められた事件です(知財高裁 平成 19 (行ケ) 10293)。

ところで、商品(の包装)の立体的形状のみからなる登録商標としては、「コカコーラ」(登録5225619号 図左)や「ヤクルト」(登録5384525号 図右)の形状が知られていますが、これらは、その著名性等が立証されたことで商標法3条2項を適用して登録されものです。

一方で、「ギリアンチョコレート事件」では、商標法3条2項の適用なしに、その立体的形状の識別性が認められて登録されたレアケースという点で、画期的な立体商標なのです。
 だから、弁理士にとっては、義理でも貰って嬉しくないはずがありません!泣いて喜びます! 

しかし残念なことに、2022年現在、ギリアンの国際登録0803104号は、存続期間満了により、失効してしまったようです。また、登録立体商標となったギリアンのチョコレートバー自体も販売はされていないようです。
 そもそも、ギリアンチョコレートそのものは、もはや、コストコでしか売っていないのでした(リアル店舗では)。

ということで早速コストコへ、日本で唯一売っていると思われるギリアンチョコ「ギリアン テンプテーション」を購入してきました。もちろん、誰かのための義理チョコではなく、近年ブームの自分チョコです。

(写真:「ギリアン テンプテーション」)

 さすがコストコサイズということで、「ギリアン テンプテーション」は、チョコが62個入って、1400円くらいでした。中には6種のチョコレートが入っております。


黒「ダークプラリネ」 こげ茶「オリジナルプラリネ」
金「キャラメル」 うす茶「コーヒー」
青「ミルクトリュフ」 赤「クランチービスケット」 

そしてチョコレートの形状は、全て「竜の落とし子」です。この「竜の落とし子」は、ギリアンのシンボルマークであり、商標登録もされています(国際登録0826169号)。

 
(国際登録0826169号 第30類「チョコレート及びチョコレート製品」等)

その味は、海外特有のクセの強いモノではなく、おいしくいただけます。実は「ギリアン」は、お口の恋人「ロッテ」の傘下であり、日本へのローカライズが上手いのかもしれません。個人的には、クランチービスケット(赤)が好きです。 

このようにT.T.は、自分用「ギリアンチョコレート」を購入したことにより、大変満足いたしましたが、まだまだT.T.義理チョコ大募集中です!(もちろん本命も)
 チョコレートをくれた人には、米国特許法の懲罰的損害賠償制度に倣い、お菓子を3倍にして返します!(本命の場合は中国に倣って5倍?!)

T.T.


にほんブログ村
にほんブログ村