商標弁理士のT.T.です。
さて、2022年2月の冬季北京五輪は、日本代表が過去最多のメダル数とのことで注目されましたが、やはり、商標法的に注目だったのは、女子カーリングのロコ・ソラーレでしょう??
そうです。ロコ・ソラーレといえば、前回2018年の平昌五輪に「そだねー」「もぐもぐタイム」といったパワーワードを生み出し、特に「そだねー」が「2018 ユーキャン新語・流行語大賞」では年間大賞となりました。(ちなみに、北京五輪では「そだねー」を自粛したらしい。)
そして、それに影響されてか、多数の「そだねー」が、商標登録出願されたのが、商標法的注目ポイントです(商願2018-024077、商願2018-64527等)。
では、新語・流行語大賞に選出されるような語は、識別性がないとして絶対商標登録できないのかといえば、全てがそうではありません。
例えば、「忖度」(2017年 年間大賞)は商標登録されています(登録6223798号)。
ところで「忖度」というと、某夫妻をイメージされる人が多いと思いますが、商標権者は、「株式会社ヘソプロダクション」となっています。誰ですか?
実は、「株式会社ヘソプロダクション」とは、その代表取締役(稲本ミノルさん)が、「忖度」の新語・流行語大賞受賞者なのです(参照リンク)。受賞者となった一番の理由は、某夫妻が当時勾留されており、授賞式に参加できなかったことにあるようですが、この株式会社ヘソプロダクションも、「忖度」において、大きな貢献を果たしたことも影響しています。
それが、株式会社ヘソプロダクションが販売する「忖度まんじゅう」です。
「忖度まんじゅう」とは、2017年6月に発売された商品で、もちろんオリジナル「忖度」(2017年3月初出)に便乗して作られたものです。しかしながら、発売半年で累計10万箱も売れたヒット商品となり、話題になったことから、株式会社ヘソプロダクションの代表取締役が、受賞者として選出されたようです。
ところが、登録6223798号「忖度」は、出願人が賞の関係者だからといって、すんなり商標登録された訳ではありませんでした。
審査では、「忖度」の語が「流行語として認識されるほか、商品の宣伝において使用される語句の一つとして認識される」ことから、識別性がないとして拒絶査定となり(商標法3条1項6号)、拒絶査定不服審判まで進んでしまったのです。
その審判請求書では、①「忖度」は宣伝広告に一般的に使用される語句ではない、②「忖度」を付したまんじゅうは、各種メディアに取り上げられ、新語・流行語大賞を受賞し、10万箱を突破するヒット商品であるから、出願人の取り扱いに係る商品であると需要者等に認識されているといった点を主張したようですが、最終的には審決にて「流行語として広く一般に認識されている語であるとはいえるものの、該文字が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないといえるほどに、不特定多数の者によって商品等の販売、広告等に使用されているとの事実を発見することはできなかった」として、識別性があると判断され、商標登録が認められたのでした(拒絶2019-007900)。
そんな「忖度まんじゅう」は、創英から歩いて約15分、有楽町駅前の東京交通会館1階にあるアンテナショップ「大阪百貨店」で販売されており、仕事帰りに手軽に入手可能です。
ただし私は、商標部門長らに忖度はせず、私とその家族だけで美味しく頂きました。
箱には、登録6223798号と同じ書体の「忖度」がプリントされた丸型のまんじゅうが入っております。味的にもネタ的にもおいしいです。
ところが、その餡は「こしあん」です。これでは、相手が「つぶあん派」だった場合、忖度できない可能性に注意してください。
(T.T.)
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