商標弁理士のT.T.です。
さて、弁理士とは、いかんせんマイナーなので、弁護士や便利屋と間違えられたり、婚活パーティーの参加資格欄では「士業:弁護士・公認会計士・司法書士・不動産鑑定士」と仲間外れにされたり、とある恋愛小説でもモテない主人公の職業が弁理士だったりと、散々です。
しかしながら、せっかく苦労して取った弁理士資格なので、それなりにプライドはあることから、やはり、世間からの評判は気になるものです。そこで私は、しばしばTwitterで「弁理士」と検索をかけて、エゴサしています。
そこでヒットした、気になるツイートがこちら。
なぜ気になったかと言えば、筆者T.T.の苗字(鶴田)と、そこはかとなく似ているからでしょう。
当社商品「つる太郎」の商標を取得しようと弁理士さんに相談したら「片岡鶴太郎さんから許諾を得ないと取得できない可能性が高い」と言われて保留中。どうすれば許諾を頂けるのだろう🤔#つる太郎 #片岡鶴太郎 pic.twitter.com/8nx4Gp141L
— あおもりの味『ねぶた漬®』のヤマモト食品 (@yamamotofoods) September 10, 2021
ところで、商標法4条1項8号では、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」が、商標登録を受けることができないと規定しています。
本当ですか??
商標 拒絶査定不服の審決(不服2007-27026)
指定商品: 33類(
日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒)
出願人: 老松酒造株式会社
【審決の要旨】(下線や太字は筆者による)
拒絶審決。
また、1980年代より現在に至るまで片岡鶴太郎のことを指し示す語として「鶴太郎」の略称が数多く使用されている事実が認められ、さらに、近年においては画家としての評価が高まることにより、……「鶴太郎」の語が、画家である片岡鶴太郎を指し示す略称として新聞、テレビ等において広く使用されている事実が認められる。
そして、商品の包装並びに日本酒及び焼酎のラベル等に片岡鶴太郎による絵画又は書をあしらった商品が存することが認められ、それらの商品を説明する記載の中においても片岡鶴太郎を指し示す語として「鶴太郎」の略称が使用されている事実が認められる。
以上の事実を総合勘案すると、「鶴太郎」の文字(語)は、演芸及び書画等の業界を超えて、片岡鶴太郎を指し示す略称として一般に受け入れられているものと判断される。
したがって、本願商標の構成中にある「鶴太郎」の文字(語)は、上記の片岡鶴太郎の著名な略称と認めるのが相当である。
また、請求人が、本願商標につき商標登録を受けることについての承諾書等の提出がないことから、その承諾を得たことを確認することもできない。
してみれば、本願商標は、他人の著名な略称からなる商標であり、かつ、当該他人の承諾を得ているとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するといわなければならない。」
引用元:J-PlatPatから検索 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
参照:「国際自由学園事件」(最高裁判例 平成16(行ケ)168)
しかしながら、いかなる文字態様であっても、「つるたろう」という言葉からは、多くの人が「片岡鶴太郎」を連想してしまうのも、また事実なのかもしれません。
(オマケ)
「つる太郎」には、テレビCMもあります(https://www.youtube.com/embed/6HXF-XyCwRY)。
CMソングから妙な依存性を感じます。
このCMに登場する「ツル多はげます会」とは、「ハゲをポジティブにとらえ、ハゲを通じて世の中を明るく照らす平和の活動と社会貢(光)献を目的」に活動する団体で、青森県「鶴田町」で発足しました。
そうです、筆者T.T.と同姓(鶴田)の町名です。
写真:JR五能線 陸奥鶴田駅(青森県鶴田町) |
青森県鶴田町は、日本一長い木造橋「鶴の舞橋」があることで有名です。また、ブドウ品種「スチューベン」の生産量日本一であり、「つるたスチューベン」は、「GI法」の地理的表示として登録されていることは、弁理士的注目ポイントでしょう(登録番号第75号)。
そして、町の鎮守に「鶴田八幡宮」があり、「つるた調剤薬局」「養老乃瀧 鶴田店」「青森銀行 鶴田支店」など、見渡す限り「鶴田」「鶴田」「鶴田」の表示。まるで自分が、この世の支配者にでもなったかのように錯覚してしまいます。
※T.T.は九州発祥の苗字で青森県鶴田町とは縁もゆかりもない上に、鶴田町には鶴田姓は一人も住んでいないらしい。
商標の世界では、同一の名称が存在することを忌み嫌う傾向にありますが、このように、自分と同姓の市町村名が存在することは、むしろ親しみを感じてしまうもので、不思議ですね。