ところで、仙台育英高校は、文字通りの宮城県仙台市の高校ですが、仙台市の商標法事件といえば、仙台市の伝統工芸品「堤人形」にまつわる、結合商標の類否が争われた最高裁判例「つつみのおひなっこや事件」でしょう。しかし、「つつみのおひなっこや事件」は別の機会に譲るとして、今回は、これもまた仙台市にまつわる商標法事件「福の神仙臺四郎事件」の「仙台四郎」人形を入手するため、T.T.は仙台駅に足を踏み入れました。
実際、仙台の飲食店に行くと、仙台四郎の写真が飾られ、仙台駅や牛タン発祥の店等には、仙台四郎の像が飾られ、仙台駅周辺では、至る所で偶像化された仙台四郎を見ることができます。
「仙台四郎」は、神ということで、勿論それを祭る寺「三瀧山不動院」もありまして、仙台駅西部・クリスロード商店街沿いのビル内部に建立された珍しい境内の奥に、仙台四郎像が安置されています。この像を奉納したのが、「東洋工芸株式会社」であり、この会社が原告となって起こした訴訟が「福の神仙臺四郎事件」(仙台地裁
平成15年(ワ)684号)です。
「福の神仙臺四郎事件」とは、仙台市内で飲食店・麻雀クラブ・民芸品製作を営んでいた「こま屋」(被告)が、「福の神仙臺四郎」や「商売繁盛仙臺四郎」の標章を付し、写真・のれん・キーホルダー・土鈴といった仙台四郎グッズを製造・販売していたところ、「福の神仙臺四郎」の商標権(登録3141495号等)を持ち、同じく仙台四郎グッズを販売する「東洋工芸株式会社」(原告)から、商標権侵害・不正競争防止法違反・著作権侵害を理由として、被告の仙台四郎グッズの販売差止・損害賠償等を求め、訴訟を提起された事件です。
商標権侵害について、仙台地裁は、原告登録商標及び被告標章のいずれについても、「実在した人物である仙台四郎の呼称又は商売繁盛の福の神との個性を表現したものであることからすると……仙台四郎及び同人がもたらす商売繁盛等のご利益を想起させ、これによって購買意欲を惹起させるものであるとみるのが相当であって、特定の製造者、販売者の商品であることを想起させるものとは認められない」として、被告標章は、出所表示機能・自他商品識別機能を果たしていない態様で使用されていることから、商標権侵害を認定しませんでした(仙台地裁 平成15年(ワ)684号)。
なお、不正競争防止法については、被告標章が、出所表示機能・自他商品識別機能を果たしていない態様で使用されていることから、不正競争行為(不競法2条1項1号・2号)に該当しないとし、著作権侵害についても、原告商品が、応用美術に当たり、また、創作性も低く、著作物に当たらないことから、認定されませんでした。
2023年現在、原告「東洋工芸株式会社」も被告「こま屋」も閉業してしまったようですが、その承継人たちによって、現在も仙台四郎人形が製作・販売されています。原告・被告の仙台四郎人形は、仙台の土産屋や「三瀧山不動院」の仲見世で購入することができます。T.T.は、開運祈願……と、商標的使用態様の研究のため、当然、原告と被告、両方の仙台四郎人形を購入しました(のべ23000円)。
さて、原告・被告の仙台四郎人形は、いずれも下半身部を見ると、陰部が丸出しとなっており、非常に生々しいです。これは、原告・被告の人形のモデルとなった、仙台四郎の座像写真のオリジナル版が、陰部丸出しだったことに由来します。しかし流石に、陰部丸出しの写真は、公序良俗を乱すためなのか、警察から修正の達しがあったようで、黒く塗りつぶされたものが現在普及していますが、人形については未だ無修正で鎮座しています。
2023年のバレンタインデーは、チョコ0個でした。
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