こんにちは。弁理士HSです。
このブログは「日々の弁理士業務からメンバーのプライベートまで、ゆるく紹介」と掲げてはいますが、何となく後ろの「プライベートまで、ゆるく」の部分が多くなっている気がします。
しかし、我々は「日々の弁理士業務」にも当然注力しており、普段から議論を交わしながら知見を増やし、最新の実務動向をキャッチアップするようにしています。
そのような取り組みの一環として、毎月1回「審決研究会」があります。今後は、気になる審決についても紹介してみたいと思います。
今回は、不服2025-3244号「称呼共通でも非類似とされた事例」を取り上げます。担当は弁理士AKです。
なお、ブログ記事という性質上、審決を分かりやすく、超簡単にまとめた内容になってしまいますので、詳細はJ-PlatPat等で審決全文をご参照ください。
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1. 本願商標・引用商標の概要
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本願商標 |
引用商標1 |
引用商標2 ※ |
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出願人: |
権利者: |
権利者: |
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指定商品: |
指定商品: |
指定商品: |
2. 結論
本願商標と引用商標1は非類似(商標法4条1項11号非該当)。
3. 審決のポイント(理由)
審決では、本願商標が1986年にコーポレートロゴとして採択され、酒類・飲料・食品等を取り扱う請求人グループにより継続的に使用された結果、我が国の一般消費者の間に広く認識されているとして、「アサヒグループホールディングスのロゴマーク」の観念が生じると認定しています。
これに対して、引用商標1は「ASAHI」の欧文字からなり、その構成文字に相応して「アサヒ」の称呼を生ずる一方、「ASAHI」は一般的な英語辞書等に載録されていないこと等から、特定の観念は生じないとされました。
なお、外観については、本願商標は特徴的なレタリングのロゴであるのに対し、引用商標1は一般的な書体であり、印象を異にするものであると認定されています。
以上を踏まえて、称呼(ともに「アサヒ」)が共通であっても、外観と観念の差異を総合すると、互いに紛れるおそれはない(非類似)、という結論となりました。
4. 気になった点・コメント
一般論として、文字商標でも、社会通念上同一といえる程度のレタリングであれば、権利範囲に含まれ得ます(「類似」という範囲も考えれば、なおのことです)。その意味で、今回の争いが生じるのは自然なことでしょう。
一方で本件は、本願商標が「周知な社標」として強い識別的印象を形成している点が、非類似方向に作用した事案でした。つまり、後発者が長年の使用で周知性を獲得すると、「後発者の社標」という観念が形成され、他の要素と総合考慮した結果、非類似となる場面があり得ます。
しかし、この「あり得る」という点は周知性の程度や、先行権利者の使用の有無、外観の差異の程度などにもよるため、悩ましいところになるでしょう。実際、特許庁の審決にもブレがあるため、類似・非類似の見通しが立てにくい現状です。例えば、不服2022-16101ではと文字の「SMP」(44類)は類似、不服2020-714では
と
(29、30類)は類似と判断されました。
本件に戻ると、審決は、先行権利者の利益を保護すべき要請と、後発使用者の企業努力によって形成された事実状態の保護を利益衡量したうえで、公平公正な結論を目指したのではないかと考えます。
推測にすぎませんが、引用商標1の権利者(旭松食品)は、「ASAHI」を使用していないように見受けられ、本願商標の出願人たるアサヒグループの使用に対しても、これまで特にアクションを起こすことはなく、黙認してきたと思われます。他方、本願商標は実際に出願人グループ全体で統一的に大々的に使用され、先行権利者たる旭松食品の信用にあやかろうとする意図や事情は見当たりません。
また、食品分野で「アサヒ」を名乗る会社は複数あると思われ、それにより「アサヒ」の称呼には強い識別力がないと評価された可能性もあります。
アサヒグループの企業努力により、本願商標のロゴを見れば直ちにアサヒグループのロゴだと認識されるほどの周知著名性を獲得しているのであれば、その保護を優先させても良いと判断した審決と思われます。〔了〕