2017年10月12日木曜日

【新人奮闘日記】第三弾は「結合商標」についてです。~ワールド事件(平成22年(行ケ)第10102号)~




こんにちは。

新人弁理士のD.Mです!

早いものでもう10月ですね。

 

 さて、早くも人気コーナーとなっている新人奮闘日記シリーズですが、今回のテーマは「結合商標」です。

 

 そもそも結合商標とは、「文字と文字、図形と図形のように同一種類の構成を結合してなる商標、さらに文字と図形、記号と立体的形状のように異種類の構成を結合してなる商標」を言います(平尾正樹著 学陽書房 商標法第2次改訂版 p4より)


 





 例えば、上記のようなものは、文字と図形からなる結合商標と考えられます。

 

ここで今回紹介させて頂く「ワールド事件」では、この「結合商標の類否」が争われました。(商標の類似についての判例は、新人奮闘日記第一弾をご参照ください!)



 



原告商標

 










引例商標2

引例商標4 

 

 

                   

 



事件の経緯としては、原告商標は、引用商標2及び4と類似すると判断され拒絶審決がなされました。

これは、引用商標2及び4の「WORLD」の文字が他の部分より大きいから、需要者は引用商標2及び4の「WORLD」の部分に着目すると考えられた結果、原告商標「WORLD」と引用商標2及び4のWORLD」部分が類否判断の対象となったため拒絶審決がなされたと思われます。

この様に結合商標の類否を判断する際には、商標の「要部を認定」をして類否判断をする場合があります。

今回のケースで言えば、引用商標2及び4を構成する「WORLD」部分が要部と認定され、類否の判断が行われたものと考えられます。

 

さて、本題に入っていく前に、この要部認定の判断基準を示した最高裁判決である「つつみのおひなっこや事件」(最高裁平成20年9月8日判決)を少しだけ紹介させて頂きます。

 

規範では、

商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,


① その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合,

② それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合

を除き許されないと述べられており、原告はこの規範をもとに主張をおこないます。

 

簡単に原告主張を説明すると、

・「WORLD」は広く一般に使われている語であるため、引用商標2及び4の「WORLD」部分は強く支配的な印象を与えるわけではない。(WORLDの語は結合しやすい性質を持ち、引用商標2及び4は不可分一体に結合されていると原告は主張しています)

・引用商標2を構成する「collezione」の文字部分及び引用商標4を構成する「ONE」の文字部分からも称呼観念が生じる。

 

以上の理由から、引用商標2及び4から「WORLD」部分を要部として認定し類否判断を行うのは間違いだといった主張を原告は行いました。

 

では注目すべき裁判所の結論ですが、、、、、、、、、、、、、、

 

「非類似」と判断されました。

 

つまり、引用商標2及び4を構成する「WORLD」部分を要部と認定するのは間違っているとの判断がされました。

 

ここで注目すべきは、裁判所は「つつみのおひなっこや事件」の規範をそのまま引用せず、以下のような規範を述べたことです。

 

複数の構成部分を組み合わせた結合商標を対比の対象とする際には,


まずは結合商標の外観,観念,称呼の態様を総合的に観察してみて,

一体のものとして対比の対象とするのか分離して対象とするのかを決し,

その上で,具体的な取引の実情が認定できる場合には,その状況も踏まえて,

不可分なものとするのか,それとも分離しその一部を抽出してみるのかを決すべきである。

 

と述べています。

 

この規範のポイントとしては、

    要部の認定の際にも、外観称呼観念を総合考察する。

    要部の認定の際にも、取引の実情を考慮する。

 

この二点が読み取れると私は考えました。

 

この規範をもとにして判断をした場合には、当然のことながら、引用商標2及び4の「WORLD」の文字が「他の部分より大きいから要部となる」といった外観上の理由だけで「WORLD」部分を要部と認定をするのは誤りかと思われます。

 

 

【裁判例へのコメント】

つつみのおひなっこや事件の規範では、①どのような場合に強く支配的な印象を与えるか②どのような場合に出所識別標識としての称呼、観念が生じないかが不明であると私は思います。

この点、本裁判例の規範では、要部認定の際にも外観称呼観念を総合考察し、さらに取引の実情も考慮すると述べらており、つつみのおひなっこや事件の規範を少し具体化したものなのではと私は考えました。

 

また、原告商標「WORLD」が一般に広く知られるようになっていたものであると認定が本裁判ではなされており、この点も引用商標の「WORLD」部分を要部として認めなかったことに大きく作用しているのではと私は考えました。

 

今回はここで以上となります。

実務を行っていく中で、「結合商標」「要部認定」はとても難しいところではありますが、さらに勉強を進めていき「自分の中の答え」を一日でも早く見つけていきたいです!!

新人弁理士D.M


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