2021年3月20日土曜日

~審決紹介~「〇〇Tube」「〇〇チューバー」と「YouTube」「ユーチューバー」を混同するか?

弁理士のR.Hです。

春らしい日が続いて嬉しい反面、花粉が気になります。

 

商標チームでは、毎月「審決研究会」を行っており、毎回数例ほどの審決を取り上げて議論しています。本日はその一つを要約して紹介いたします。

1.事件の概要(無効2018890081

登録第5999063号に対する無効審判事件。請求人(Google社)は、4条1項10号、11号、15号、19号、7号の該当性を主張したが、請求棄却、権利維持となった。


2.登録商標

本件商標:ニャンチューバー(標準文字)

権利者:株式会社 PECO

指定商品・役務:

・第35類「ペットモデル出演契約交渉の媒介,芸能プロダクション事業の管理・運営,広告制作プロダクションの事業の評価又は事業の管理,広告業」等

・第42類「愛玩動物に関するホームページの作成及びこれに関する情報の提供,愛玩動物に関する情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」

 

3.引用商標

YouTube(標準文字):登録第4999382

指定役務:第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守」等(その他第38類及び第41類の役務)

:登録第4999383

指定役務:引用商標①と同じ

 

:国際登録第991364

指定役務:第35類、第42類、第9類、第38類及び第41類

YOUTUBE(標準文字)

指定商品及び指定役務:第35類、第9類

⑤ 「ユーチューバー」及び「YOUTUBER」:未登録標章

 

4.審判の判断

審判では以下のように判断し、4条1項10号、11号、15号、19号、7号の該当性を否定しました。

<引用商標の周知性>

引用登録商標(①~④)は、請求人の提供する「YouTube」を表すものとして、周知・著名なものであるというのが相当である。

引用未登録標章(⑤)は、「『YouTube』に頻繁に動画を投稿し、人気やその結果の広告収入を得ている人たち」を表す語と理解されているということはできるものの、請求人から提出された証拠において、請求人の業務に係る役務を表すものとして、広く知られていたといい得る証拠を見いだすことはできない

<類否判断>

YouTube」と「ニャンチューバー」は外観・称呼・観念非類似。

<混同を生じるおそれ>

・引用登録商標(①~④)が周知・著名であるのは、請求人の業務に係る役務「通信ネットワークを利用した音声・音楽・静止画・動画の提供」であるところ、本件商標の指定役務には、上記役務と同一又は類似する役務は含まれていないため、両役務に関連性があるとはいえない。

・引用未登録標章(⑤)は、「『YouTube』に頻繁に動画を投稿し、人気やその結果の広告収入を得ている人たち」を意味し、そのように理解されているものであって、特定の者を指称するものではないから、これより請求人又は特定の第三者を想起するとはいい難い。

 

5.その他「〇〇Tube」「〇〇チューバー」商標について

・商願2019-145687号「YouTuBar」(指定役務:アルコール飲料を主とする飲食物の提供)

4115号で拒絶査定(Google社又は同社と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがある)


・登録第6152443号「SpoTuber TV\スポチューバー TV

→異議2019-900252で申立人は、同様の証拠に基づいて、4条1項10号、11号、15号の異議理由を主張するも権利維持の審決


・登録第5075094号「マイチューブ\My Tube

→異議2007900551で申立人は、同様の証拠に基づいて、41項10号、11号、15号、19号の異議理由を主張するも権利維持の審決

取消2008301328で申立人は商標権利者の以下の使用態様に対して不正使用取消審判を請求し、取消審決。

(使用態様)

 


・登録第5080663号「Fuu Tube

→異議2008900001で申立人は、同様の証拠に基づいて、4条1項11号、15号、19号、7号の異議理由を主張するも権利維持の審決

取消2009300042で申立人は商標権利者の以下の使用態様に対して府営使用取消審判を請求し、取消審決。

(使用態様)


 



6.おわりに

本件商標「ニャンチューバー」は「YouTube」「YouTuber」を意識した側面はあるかもしれませんが、類否の程度等を考慮すると無効理由に該当しないという判断には妥当性があります。

また、他の「〇〇Tube」「〇〇チューバー」の例を見ても、「YouTuBar」程類似していなければ登録は認められると言えそうです。但し、仮に登録できたとしても、実際の使用態様を本家「YouTube」に寄せてしまうと不正使用取消審判で取り消されてしまうおそれがあるので使用態様には注意が必要です。

今後も不定期で審決紹介させていただきます。

R.H

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