2021年10月26日火曜日

「つる太郎」(ヤマモト食品)は「片岡鶴太郎」の著名な略称に当たるか?

 商標弁理士のT.T.です。

さて、弁理士とは、いかんせんマイナーなので、弁護士便利屋と間違えられたり、婚活パーティーの参加資格欄では「士業:弁護士・公認会計士・司法書士・不動産鑑定士」と仲間外れにされたり、とある恋愛小説でもモテない主人公の職業が弁理士だったりと、散々です。
 しかしながら、せっかく苦労して取った弁理士資格なので、それなりにプライドはあることから、やはり、世間からの評判は気になるものです。そこで私は、しばしばTwitterで「弁理士」と検索をかけて、エゴサしています。

そこでヒットした、気になるツイートがこちら。
 なぜ気になったかと言えば、筆者T.T.の苗字(鶴田)と、そこはかとなく似ているからでしょう。


つる太郎」とは、青森県青森市の食品メーカー「ヤマモト食品株式会社」が販売している「昆布しょうゆ漬け」です。その食感が、昆布から染み出したネバネバ汁で、ツルっとしているので、「『つる』太郎」なのでしょう(実は、発売当時の社長の頭がツルツルしていたのも由来らしい)。そしてその味は、北国特有の濃ゆい味ですが、「つる太郎」のネバネバ汁が、ご飯粒まで染み込むことで、いい塩梅となり、むしろ依存性があります。


 ところで、商標法4条1項8号では、
「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標その他人の承諾を得ているものを除く。)」が、商標登録を受けることができないと規定しています。

そのため、上記ツイートは、「つる太郎」が、著名な芸名「片岡鶴太郎」さんの「著名な略称」に該当するから、片岡鶴太郎さんの承諾を得ないと、商標登録を受けることができない可能性を示唆しているようですが・・・・・・

本当ですか??

実は、特許庁の審決により、「鶴太郎」が「片岡鶴太郎」の著名な略称であると、過去に認定されていました(不服2007-27026)。

商標 拒絶査定不服の審決(不服2007-27026

【本願商標】
商願2006-99291

指定商品: 33類(  日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒)
出願人: 老松酒造株式会社 

【審決の要旨】(下線や太字は筆者による)
拒絶審決。

 「太田プロダクションに所属し、画家、俳優として活躍している片岡鶴太郎(本名  荻野繁雄)は、1980年代よりテレビのバラエティー番組、ドラマ及び映画等に数多く出演し、……「鶴太郎の○○○」として「鶴太郎」の語を冠するテレビ及びラジオ番組が数多く存したことが認められる。
 また、1980年代より現在に至るまで片岡鶴太郎のことを指し示す語として「鶴太郎」の略称が数多く使用されている事実が認められ、さらに、近年においては画家としての評価が高まることにより、……「鶴太郎」の語が、画家である片岡鶴太郎を指し示す略称として新聞、テレビ等において広く使用されている事実が認められる。
 そして、商品の包装並びに日本酒及び焼酎のラベル等に片岡鶴太郎による絵画又は書をあしらった商品が存することが認められ、それらの商品を説明する記載の中においても片岡鶴太郎を指し示す語として「鶴太郎」の略称が使用されている事実が認められる。
 以上の事実を総合勘案すると、「鶴太郎」の文字(語)は、演芸及び書画等の業界を超えて、片岡鶴太郎を指し示す略称として一般に受け入れられているものと判断される。
 したがって、本願商標の構成中にある「鶴太郎」の文字(語)は、上記の片岡鶴太郎の著名な略称と認めるのが相当である。
 また、請求人が、本願商標につき商標登録を受けることについての承諾書等の提出がないことから、その承諾を得たことを確認することもできない。
 してみれば、本願商標は、他人の著名な略称からなる商標であり、かつ、当該他人の承諾を得ているとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するといわなければならない。」

引用元:J-PlatPatから検索 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
参照:
国際自由学園事件」(最高裁判例 平成16(行ケ)168

 調べた限り、「片岡鶴太郎」を指し示す語として、「つる太郎」の使用例までは見受けられないことから、個人的には、「つる太郎」が、「片岡鶴太郎」を指し示す略称として一般に受け入れられているかは、気になるところです。
 しかしながら、いかなる文字態様であっても、「つるたろう」という言葉からは、多くの人が「片岡鶴太郎」を連想してしまうのも、また事実なのかもしれません。
(※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。)


(オマケ)
 「つる太郎」には、テレビCMもあります(https://www.youtube.com/embed/6HXF-XyCwRY)。
 CMソングから妙な依存性を感じます。

このCMに登場する「ツル多はげます会」とは、「ハゲをポジティブにとらえ、ハゲを通じて世の中を明るく照らす平和の活動と社会貢()献を目的」に活動する団体で、青森県「鶴田町」で発足しました。
 そうです、筆者T.T.と同姓(鶴田)の町名です

写真:JR五能線 陸奥鶴田駅(青森県鶴田町)

青森県鶴田町は、日本一長い木造橋「鶴の舞橋」があることで有名です。また、ブドウ品種「スチューベン」の生産量日本一であり、「つるたスチューベン」は、「GI法」の地理的表示として登録されていることは、弁理士的注目ポイントでしょう(登録番号第75号)。

そして、町の鎮守に「鶴田八幡宮」があり、「つるた調剤薬局」「養老乃瀧 鶴田店」「青森銀行 鶴田支店」など、見渡す限り「鶴田」「鶴田」「鶴田」の表示。まるで自分が、この世の支配者にでもなったかのように錯覚してしまいます。

※T.T.は九州発祥の苗字で青森県鶴田町とは縁もゆかりもない上に、鶴田町には鶴田姓は一人も住んでいないらしい。

商標の世界では、同一の名称が存在することを忌み嫌う傾向にありますが、このように、自分と同姓の市町村名が存在することは、むしろ親しみを感じてしまうもので、不思議ですね。

(T.T.)


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