こんにちは。甘いもの大好き、弁理士のH.S.です。
例年ですと、いちごとさくらの季節になりますが、今年は少し趣を変えて、日本茶×スイーツを楽しんでいます。私は以前、京都に住んでいましたので、当然ながら「宇治茶」ですね。そして個人的に深い縁のある福岡県の南部に位置する八女市の「八女茶」とのコラボも体験してきました。
「宇治茶」「八女茶」のように、「地域の名称」+「商品・サービスの普通名称」からなる商標について、通常の商標とは異なり、「地域団体商標」という制度が存在します。この制度は、「地域ブランド」の保護により、地域経済の活性化を図るもので、2006年より導入されたものです。
通常、商品の産地、原材料等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、識別力がないものとして、原則商標登録を受けることができないとされています(商標法第3条第1項第3号)。しかし、地域団体商標制度を利用することで、一定の要件の下で、前記規定にかかわらず、商標登録を受けることができます(商標法第7条の2)。
地域団体商標は、識別力の要件を緩和する一方、出願人の限定、商標の構成の限定、一定の周知性が必要といった、通常の商標登録出願とは異なる要件がありますので、特に注意が必要です。具体的に…
1.出願人が特定の団体等でなければなりません。
事業協同組合等の特別の法律により設立された法人格のある組合であって、構成員の資格を有する者の加入の自由が保障されているもの(農業協同組合等)、若しくは、商工会、商工会議所、NPO法人、これらに相当する外国の法人でなければなりません(商標法第7条の2第1項柱書)。
*ただし、地域未来投資促進法の特例を受けることができるとき、上記に該当しない法人でも、地域団体商標を出願できる場合があります。
2.商標は特定の構成(組み合わせ)からなるものでなければなりません。
①地域の名称+商品・サービスの普通名称(例:宇治茶);②地域の名称+商品・サービスの慣用名称(例:保津川下り=京都府保津川流域における遊船による旅客の輸送);③前記①②にさらに慣用された文字を組み合わせたもの(例:山形名物玉こんにゃく)(商標法第7条の2第1項各号)。
3.商標中の「地域の名称」と「商品・サービス」に密接な関連性を有するものでなければなりません。
その商品の産地や、サービスが提供される場合等をいいます(商標法第7条の2第2項)。また、この点について、出願の際に証明書類も提出しなければなりません(同条第4項)。
4.出願商標は、一定の周知性を有するものでなければなりません。
全国周知までは必要ないものの、ある程度の地理的範囲内(一般的には、隣接都道府県程度)において、消費者等の間で広く認識され、知名度があるものでなければなりません(商標法第7条の2第1項柱書)。実務上、特にこの周知性が最も重要になりますが、客観的事実によって証明できるものでなければなりません。場合によっては、証拠資料の提出など、苦労する場合もあります。
*周知性の地理的範囲は、具体的な商品・サービスの内容等により個別判断されるものであり、必ずしも一律の基準というわけではありません。
※ほか、登録後においても、地域団体商標の商標権は譲渡できない(商標法第24条の2第4項)などの制限があります。
さらに、実はよく知られていない事実として、日本商標法に基づく地域団体商標制度は、根拠条文の規定にあるように、外国法人による外国商品等についても利用することができます。少し古い情報になりますが、2022年12月時点では、3件が登録されています。
・CEYLON TEA(スリランカ産の紅茶等・登録6164182号)
・鎮江香醋(中国の鎮江産のもち米を用いて鎮江地区で製造された食酢・国際登録965547号)
・PROSCIUTTO DI PARMA(=イタリア国パルマ地方産のハム・登録5073378号)
ここまで説明してきたように、地域団体商標は通常の商標にない特別要件が付加されており、また証明書類の提出も必要になります。商標登録出願は、一度した後、商標や商品等の変更が厳しき制限されており、これを事後的に修正すると「要旨を変更するもの」であるとして、補正手続が却下される可能性もあります。
書類の不備のみによって、最終的に登録を受けられないとなると、非常にもったいないだけでなく、地域ブランドの適切な保護を十分に図れない事態になりかねません。再出願や書類を何度も提出すること自体も、とても手間と費用が掛かります。
このような事態を避けるためにも、商標関連法令を熟知し、さらにその地域の事情や係る商品等をよく知る弁理士に相談することをお勧めいたします。
もちろん、弊所でも地域団体商標のお手伝いをいたします。東京(首都圏)だけでなく、京都オフィス、福岡オフィスもありますので、それぞれの地域事情をよく知る弁理士が在籍していることも強みです。地域団体商標の出願等をお考えのお客様は、お気軽にご相談ください。
0 件のコメント:
コメントを投稿