2023年3月15日水曜日

うどん県のうどん商標事件【こんぴら製麵事件 4①8 #チザウド】

 

 商標弁理士のT.T.です。
 毎年71日が「弁理士の日」だというのは、皆さんご存じのことかと思いますが(?)、その翌日72日は「うどんの日」と呼ばれるそうです。「うどんの日」を制定したのは「香川県製麺事業協同組合」で、香川県では古くから72日頃(夏至から11日目の「半夏生」の日)に農作業を手伝ってくれた人にうどんを振舞う習慣があったことに由来します。そんな香川県の「讃岐うどん」といえば、誰もが知る超A級グルメですが、それにまつわる商標事件は意外となく、「こんぴら製麺事件」と「金比羅製麺事件」ぐらいしかありません。 

 「こんぴら製麺事件」と「金比羅製麺事件」とは、株式会社太鼓亭(原告)が、自身の経営するうどんチェーンに使用する商標「こんぴら製麺(商願2012-9056」と「金比羅製麺(商願2012-9057」を出願したところ、「宗教法人金刀比羅宮」の著名な略称を含む商標(商418号)であるとして、特許庁から拒絶査定・審決(拒絶2013-18639、拒絶2013-018640)とされたことから、それを不服とした審決取消訴訟事件です。
 知財高裁は、複数の辞書にて「こんぴら(金比羅・金毘羅)」が「金刀比羅宮」を指す言葉として使われている例があり、原告自身も「こんぴらさん(金比羅さん)」が「金刀比羅宮」の「著名な略称」に該当することも認めていることから、「こんぴら(金比羅)」の語は、「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして、一般的に受け入れられているため、本願商標「こんぴら(金比羅)製麺」は「宗教法人金刀比羅宮」の著名な略称「こんぴら(金比羅)」を含む商標(商418号)に該当すると判断しました(知財高裁 平成26(行ケ)10266平成26(行ケ)10267)。 
(商願2012-9056
商願2012-9057

 原告のうどんチェーン「金比羅製麺」は、関西圏で10店舗ほど展開しており、「釜揚げ 讃岐うどん 金比羅製麺」と名乗っているとおり、香川県で広く普及しているセルフうどんスタイルです。要は、「丸亀製麺」「はなまるうどん」の関西ローカル版です。


 一方、著名な略称として引用された「宗教法人金刀比羅宮」は、関西圏から遥か海を越えた、香川県の琴平町にある高名な神社で、琴平山(象頭山)の中腹に社殿を構えます。本宮までは758段(標高251m)奥社までは1368段(標高421m石段を登らなければならず、入ってから出るまで約2時間半、神社にお参りというよりは登山です。
 金刀比羅宮の祭神は、大物主神と崇徳天皇です。崇徳天皇(上皇)が祭られているのは、保元の乱(1156年)で後白河天皇方に敗れ、讃岐国へ配流、そして崩御されたことに由来し、「崇」の字を氏名に含む弁理士T.T.としては、金刀比羅宮に少し親しみを感じます。
 なお、金刀比羅宮が位置する琴平町は、うどん発祥の地を自称します。




 さて、ご存じの通り、商標法418では、著名な他人の略称等について、その他人の承諾を得られた場合には、商標登録が認めているため、仮に、原告・太鼓亭が、宗教法人金刀比羅宮から承諾を貰えば、「こんぴら製麺」と「金比羅製麺」は、商標登録できたはずでしょう。しかしながら、今度は、16号の品質等誤認の問題が生じるのではないかと気になります。即ち、関西圏で展開している「こんぴら製麺」「金比羅製麺」は、まるで「金刀比羅宮周辺で提供・販売されている麺類」かのような誤認が生ずるおそれがあることです。

 実際に金刀比羅宮の参道沿いには「こんぴら名物」「こんぴら饅頭」「こんぴら温泉」「金比羅蒟蒻」といった表示が見受けられ、「こんぴら」や「金比羅」の表示は、「『金刀比羅宮』周辺で販売・提供されている〇〇」を示していることが分かります。


 そしてもちろん、金刀比羅宮周辺では、讃岐うどんも提供されており、「こんぴらうどん(工場店)」という屋号の讃岐うどん屋があります。ここでは、「ヤドン」と「うどん」の称呼が類似しているということで、ポケモンの「ヤドン」とコラボしており、ヤドンの油揚げを乗せることができます。ちなみに香川県では、「うどん」ことを「ピッピ」と言います。


 

 また、参道中腹に構える讃岐うどん屋「つるだや」でも、品名として「金比羅うどん」が提供されています。「金比羅うどん」の何が「金比羅」要素なのか分かりませんが、具材が豪華絢爛なところが、金刀比羅宮の賑わいを表しているのでしょうか?


 この「つるだや」ですが、弁理士T.T.の苗字を一部に含む屋号ということで、これはもしかして、Tの一族の遠い親戚の末裔が経営する讃岐うどん屋かと思いましたが、経営しているのは、ヨシダさんでした。
(T.T.)



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