本日の気温は30℃に迫るとのことです。
梅雨にも入るはずですし、体調管理に気を付けていきたいですね。
今回取り上げる審決は前後の二語を入れ替えた商標の類否についてです。
なかなか悩ましい問題ですが、後述のとおり特許庁の見解も割れているようです。
1.事件の概要(異議2019-900373)
登録第6185890号に対する無効審判事件。異議申立人は、4条1項10号、11号、15号の該当性を主張したが、請求棄却、権利維持となった。
2.登録商標
本件商標:リペアバリア(登録第6185890号)
権利者:ロート製薬株式会社
指定商品:
・第3類「口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛,化粧用コットン,化粧用綿棒」
・第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」等
3.引用商標
引用商標:バリアリペア(登録第5177235号)
権利者:株式会社 マンダム
指定商品:第5類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き,つけづめ,つけまつ毛」
4.審判の判断
審判では以下のように判断し、4条1項10号、11号、15号の該当性を否定しました(下線は筆者)。
<引用商標の周知性>
(遅くとも2010年頃から販売され,現在まで継続して販売されていること、各種ランキングで上位に入っていること、2017年9月からテレビCMが放映されたことがうかがえるが)申立人商品の売上高,シェアなど販売実績を示す主張はなく,その証左は見いだせない。…
申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
<類否判断>
【外観】
外観の識別上重要な要素である語頭における「リペ」と「バリ」の文字の差異などを有し,その差異が…視覚的印象に与える影響は大きい
【称呼】
称呼の識別上重要な要素である語頭における「リペ」と「バリ」の音の差異などを有し,その差異が共に6音構成という短い音構成からなる両称呼全体に与える影響は大きく…称呼上,相紛れるおそれなし
【観念】
両商標は共に特定の観念を生じないものであるから,観念上,比較することができない。
→「修繕する,修理する」などの意を有する「リペア」の語と「さく,障壁」などの意を有する「バリア」の語の前後を入れ替えて結合してなるものといい得るとしても,それらを結合した「リペアバリア」及び「バリアリペア」の文字全体としては…いずれも特定の観念を生じないものと判断するのが相当
(周知性の否定、商標非類似で10号、11号、15号否定)
5.その他前後の二語を入れ替えた商標の類否について
同様の事例がないか調べたところ、少し調べただけでも以下の審決が見つかりました。
その類否判断は特許庁でも分かれているようです。
<非類似と判断された事例>
①「FusionData」VS「DATAFUSION」(不服2016-650065)
②「腎活」VS「活腎」(異議2015-900199)
③「ファインクール」VS「クールファイン」(異議2014-900142)
④「ウェーブストーン」VS「ストーンウェイブ」(不服2012-26011)
⑤「キッチンワールド」VS「WORLD KITCHEN」(異議2011-900139)
⑥「DRYFINE」VS「FINEDRY」(異議2010-900174)
⑦「STAR
JET」VS「JETSTAR」(異議2010-900174)
⑧「free
twist」VS「ツイストフリー\TWISTFREE」(異議2007-900421)
⑨「ブリーダートップ」VS「トップ ブリーダー」(無効2000-35449)
<類似と判断された事例>
①「優肌」VS「肌優」(不服2011-3665)
②「HEATFIBER\ヒートファイバー」VS「ファイバーヒート\fiber・heat」(不服2010-6712)
③「アースプラネット\EARTHPLANET」VS「PLANET EARTH」(異議2010-900174)※
④「JapanCareer【ジャパンキャリア】」VS「CAREER JAPAN」(不服2008-25405)
⑤「REPAIRNIGHT\リペアナイト」VS「NIGHT REPAIR\ナイト リペア」(異議2010-900174)※
⑥「パワーテーピング」VS「テーピングパワー」(不服2008-23597)
⑦「NetTouch」VS「TOUCHNET」(不服2008-11950)
⑧「開運風水」VS引用商標「風水開運」(異議2005-90392)※
⑨「スリムフィット」VS「フィットスリム\FIT SLIM」(異議2005-90392)
※権利者からの反論無し
6.おわりに
ここ数年の審決では非類似と判断される傾向にあるようですが、登録後にも異議申立て等を受けるリスクがありますので、先行商標調査で前後を入れ替えた商標が発見された時点で別商標を採択するという選択肢も考えられます。
興味深いのは類似・非類似のいずれの審決でも「観念は生じない」と認定している事例が多いことです。
類似の方では「特定の観念を認識させず、二語のどちらが前でどちらが後ろだったかの順番を混同する」、非類似の方では「造語同士で観念を比較できない。」との判断方法で結論が異なっています。
また「優肌」VS「肌優」のように、指定商品(化粧品等)の分野でよく用いられる語を入れ替えたに過ぎない場合は類似すると判断される可能性が高まるように思われます。
取り上げた審決では引用商標の周知性が否定されていますが、仮に被服の分野で著名な「ヒートテック」と「テックヒート」の類否・混同の有無が争われたらどうでしょうか?一方が著名であれば混同は生じず非類似なのか、著名商標のイメージに引き寄せられるとして類似なのか…さらに検討したいと思います。
写真無しの映えないブログとなりましたが、今後も不定期で審決紹介させていただきます。
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