商標弁理士のT.T.です。
当ブログで前回取り上げた「瓦そば事件」の記事に反応していただいた「瓦そば弁理士」様をはじめとして、最近、二つ名を名乗る弁理士や知財系弁護士が続々登場しています。その上、したたかに商標登録まで狙っている者もいるようです。例えば、登録6415028号「逆転弁理士」、商願2022-064706「パエリア弁理士」、商願2022-078874「画伯弁護士」とか。
そんな私も、知財系判決の現場ばかり旅していることから、漫画・アニメの舞台なった土地を実際訪れる「聖地巡礼」になぞらえ、「聖地巡礼弁理士」なんて、同業から言われたりしたことがありました。
突然ですが、創英には、「夜の交流会」制度というものがありまして、終業後に所員同士の懇親会を奨励しています。
そこで、商標弁理士R.H.が「夜の交流会」をしたいというので、私は、場所として、銀座の「カフェ&バー
エノテカ・ミレ」を提案しました。そうです、この「カフェ&バー エノテカ・ミレ」こそが、正真正銘、知財業界の聖地なのです。
そもそも、「カフェ&バー エノテカ・ミレ」は、一部に「エノテカ」の文字が入っていることからも伺えるように、ワインショップで有名な「エノテカ」が運営するレストランです。「エノテカ」といえば、ご存じ「ENOTECA事件」(平成27年(行ケ)10058号)でしょう。
「ENOTECA事件」(平成27年(行ケ)10058号)とは、登録5614496号「Enoteca Italiana」(第35類「飲食料品の小売等役務」等)に対し、登録5136985号「ENOTECA」(第35類「飲食料品の小売等役務」等)等を引例とした商標法4条1項11号違反等を理由に、「エノテカ(原告)」が請求した無効審判で(無効2014-890023)、棄却審決となったことから、審決取消訴訟で争われた事件です。
知財高裁は、「Enoteca」からは原告の周知な営業表示「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念が生じ、「Italiana」からは「イタリアの」の観念が生じて役務の提供場所等を認識させることから、登録5614496号「Enoteca Italiana」は、不可分的に結合しているとは認められず、「Enoteca」の文字部分が要部として抽出されることから、引用商標「ENOTECA」等と類似し、商標法4条1項11号に該当すると判断しました。
ちなみに、登録5614496号「Enoteca Italiana」の商標権者の一人は、イタリアの企業で、実際、ボローニャで「Enoteca Italiana」を営業しているようです。欧州の知財系判決ネタが溜まったら、いつか行ってみたいですね。
ところで「エノテカ」は、本店が広尾のため、本当に「ENOTECA事件」を勉強したいなら広尾まで行くのが筋でしょう。しかし、あえて銀座の「カフェ&バー エノテカ・ミレ」を選んだのは、創英・丸の内オフィスから徒歩で行けるのもありますが、最も大事なのは、「銀座すずらん通り」と「みゆき通り」がクロスした、中央区銀座6―8-3という立地です。そうです、この地は、「登録番号00001」岡村輝彦弁理士の特許事務所、すなわち、初代特許事務所があった聖地なのです。
当ブログで以前取り上げた「弁理士第1号は、スゴい人だった!?」(2021年7月21日)によれば、1899年7月1日に、岡村輝彦博士が「弁理士00001号」として登録されたことを紹介しました。そして、官報によれば、岡村弁理士の特許事務所の住所は「東京市京橋區(区)南鍋町二丁目五番地」とのことですが、これが、現在の東京都中央区銀座6―8-3に当たるのです。
現在の東京都中央区銀座6―8-3には、「銀座尾張町TOWER」と呼ばれる商業ビルが建っていて、もちろん初代特許事務所なんてものは既に存在せず、1階テナントは、弁理士とは真逆のキラキラしたジュエリーショップです。
そして、「カフェ&バー エノテカ・ミレ」は、1階ジュエリーショップを通り抜け、階段を上った2階にあり、隣に「エノテカ」ワインショップが併設された、銀座にしてはカジュアルなレストランとなります。
さて、今回の「夜の交流会」では、自分からこの場所を提案してみたものの、T.T.は、ワインの違いは全く知らない男です(商標の違いが分かる男ではありますが。)。そのため、メニューのチョイスは、周囲にお任せし、ひとまずコース料理を注文して、ワインを3本開けました。
好評(?)の当ブログ食レポですが、確かに、食事はワインに合うイタリアン料理が次々出てきて美味しかったのですが、悔しいことに、映える写真が撮れませんでした。やはり、今回のメインは「夜の交流会」ということで、それほど雑談に夢中だったためです。気づくと、2時間があっという間に経過してしまいました。
結果的に、聖地「初代特許事務所」跡で英気を養い、「ENOTECA事件」を学ぶことができ、そして、創英の所員間の交流も図れる、まさに一石三鳥な時を過ごすことができました。
ところで、「夜の交流」は創英の所員に留まらず、店員さんとも交流(軽い雑談)をしたのですが、つい癖で「実は、この場所は、初代弁理士が経営していた初代特許事務所があった場所で・・・」とウンチクを講釈垂れてしまったところ、弁理士のマイナーさも相まって、何とも微妙な反応をされてしまいました。
カジュアルな「カフェ&バー エノテカ・ミレ」は、友達や恋人との普段使いにもおススメな店ですが、「初代特許事務所の聖地」だとか「ENOTECA事件」の話を持ち出して、(一般人の)同伴者をドン引きさせないよう注意しましょう。
(T.T.)
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