2019年2月5日火曜日

恵方巻と商標の関係(招福巻事件)

新人弁理士のRHです。
先週末の日曜日は節分でしたが、創英では金曜日の昼休みに早めの節分イベントがあり、所員で恵方巻を食べました。関西がルーツの風習とも言われていますが(諸説あり)、大阪出身にも関わらず今回が恵方巻デビューとなりました。銀座のお寿司屋さんのものでボリューム満点かつ大変美味でしたね。 


 


ところで、現在はスーパーやコンビニでも「恵方巻」という名称が一般的ですが、90年代後半以降、急速に広まったものであり、それ以前は「幸福巻寿司」や「縁起巻」、「招福巻」等が一般的だったそうです(諸説あり)。そして、商標の世界では「招福巻事件」という識別性を争った有名な判例があります。

商標登録に際しては、他者と区別できるような「識別性」が登録要件(第3条第1項各号)となっています。

例えば、商品「パソコン」に「パソコン」という商品名を付けても、消費者からすると誰の商品か分からないですよね?
そこで、各社が「dynabook」や「Lets note」等の識別性のある名称を付けることで、我々消費者は各社商品を区別できています。

また、登録時には識別性があったとしても、その後にたくさんの人が、ブランド名としてではなく、商品の普通名称として呼び続けると、次第に識別性は失われ、他人の無断使用に対して権利行使ができなくなってしまいます(例:正露丸等)。

そうした「識別性」が争われたのが「招福巻事件(大阪高裁平成20年判決/大阪高裁平成22年判決)」です。※12
「招福巻」の商標登録(昭和63年登録)を持つ原告が、「十二単の招福巻」の名称を使用した被告を商標権侵害として訴えたものです。地裁判決が高裁で覆りました。
おおまかな内容は以下の通りです(創英でも過去に解説記事を出しています※3)。
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<地裁判決>
・「招福巻」を各社が使用していた例はあるが、証拠の大半が平成17年以降のものである。
・「招福巻」は辞書にも載っていない単語である。
→平成17年時点では「招福巻」は識別性のある商標であり、権利行使は有効(侵害!)」

<高裁判決>
・「招福」は辞書に記載の「福を招く」を意味する普通名称であり、「巻」も「〇〇巻」としてお寿司の世界では巻き寿司を表すから、消費者は節分等のめでたい行事に提供される巻き寿司と理解する。
・平成17年以前からに多くのスーパーで「招福巻」が使用されていた。
・他人の「招福巻」商標の使用に対する警告が遅かった(その間に他人の使用で識別性が失われた)。
→「招福巻」は識別性のない商標であり、権利行使は無効(侵害なし!)」
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「辞書に載っていないから識別性あり」や、「『福を招く巻き寿司』」という解釈されるから識別性なし」のような、単純な話ではなく、「招福巻」が節分における巻き寿司売り場でどの程度一般的にしようされていたのか(取引の実情)も重要だったと考えます(平成17年以前・以降の使用例の認定が地裁・高裁で異なります)。

そして今なら、「恵方巻」の表記だけではほぼ確実に識別力が無いでしょう。

なお、英語では「Happy(LuckyDirection Roll(そのまんま・・)だそうですが、外国人観光客向けの店では、「Fortune Roll」や「EHO ROLL」の表記も見つけました。これならどうでしょうかね?
 
1 招福巻事件(大阪地裁平成20年判決)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/875/036875_hanrei.pdf

2 招福巻事件(大阪高裁平成22年判決)http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/375/038375_hanrei.pdf

3「招福巻」商標訴訟について(創英HPより)
https://www.soei.com/blog/2010/02/01/%E3%80%8C%E6%8B%9B%E7%A6%8F%E5%B7%BB%E3%80%8D%E5%95%86%E6%A8%99%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
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